認知症で成年後見人がついた後、本人(被後見人)が自分でできること
認知症になって、成年後見人をつけたら、全てのことを、成年後見人にやってもらったり、同意が必要になったりするのかというと、そうではありません。
今回は、選挙、婚姻について、法律ではどのように定められているのかについて、簡単にご紹介します。
成年被後見人と選挙
平成25年(2013年)に公職選挙法等の一部が改正されて以降、成年被後見人の方も、選挙権・被選挙権を行使できるようになりました。
そして、投票については、投票者が投票用紙に候補者の氏名等を記載することができない状態にある場合は、代理投票という制度を使って、投票所の担当者(投票事務に従事する人)に、投票用紙に記載してもらうことができます。
代理投票
心身の故障その他の事由により、自ら投票用紙に候補者の氏名等を記載することができない場合に、その選挙人本人の意思に基づき、補助者が代わって投票用紙に記載する制度です。
総務省 選挙制度チラシより
(参照:総務省サイト)
付き添いの家族などによる代筆は認められていませんので注意してください。
さて、それでは、認知症の方でも、選挙の投票をすることができ、その投票は有効になるでしょうか。
投票所において、認知症を理由に投票が断られることはありません。
しかし、公職選挙法には「その投票した選挙人の意思が明白であれば、その投票を有効とするようにしなければならない」(67条)とありますので、意思が明白である必要はあります。
成年被後見人と婚姻
成年被後見人が婚姻をするときは、その成年後見人の同意はいらないことが、民法(738条)に定められています。
婚姻は、婚姻届を提出することで効力をもち、戸籍上、夫婦になるものです。事実婚とは異なります。
それでは、認知の方も婚姻ができるでしょうか。
婚姻には意思能力が必要です。
つまり、認知症であっても、意思能力があれば婚姻は有効になります。
まとめ
今回は、認知症で成年後見人がついた後、本人(被後見人)が自分でできることを簡単にご紹介しました。
ポイントです。
・成年被後見人も、選挙権・被選挙権を行使することができるが、行使する際の意思が明白であることが必要。
・成年被後見人が婚姻をするときは、その成年後見人の同意はいらないが、意思能力が必要。
成年後見人は、成年被後見人の意思を尊重するよう義務づけられています。
成年被後見人の本当の意思を見極めることは容易でないことがありますが、本人の意思決定を支援していくことが重要です。
成年後見制度について不明な点があるときは、お近くの専門家にご相談ください。