一般社団法人を設立した後は、どのような手続きが必要で、どのようなスケジュールで運営を行っていくか

一般社団法人の設立後の手続きとスケジュール


一般社団法人の定款認証が終わり、登記も完了した。

この後は、どのような手続きが必要で、どのようなスケジュールで運営を行っていくのか、確認したい。

法人の設立や運営をサポートする行政書士の私がご説明します。

設立直後の手続き(税金関係)

一般社団法人設立後の手続き


まず、税金関係の手続きのため、税務署や都道府県民税事務所・市町村役場に法人を設立した届を提出します。

税務署

法人を設立した届出を行います。

届出書に、定款の写しを添付して、管轄の税務署へ提出します。

提出期限は、設立から2か月以内です。


また、必要に応じて次の書類を提出します。

・青色申告の承認申請書
・減価償却資産の償却方法の届出書
・申告期限の延長の特例の申請書
など


なお、非営利型の一般社団法人は、法人設立届出書の提出は不要ですが、収益事業を開始したときは、収益事業開始の届出が必要です。(国税庁サイトより)

都道府県民税事務所市町村役場

法人を設立した届出を行います。

届出書に、法人の登記簿(履歴事項証明書)や定款の写し等を添付して、提出します。


期限は自治体によって異なります。

東京都は設立から15日以内ですが、2か月以内という県もあります。


都道府県と市町村が徴収する、法人住民税のための手続きです。

法人住民税は、収益事業を行っていない非営利型法人については減免する県や市があります。

管轄の県や市へ確認しましょう。


また、法人事業税を徴収するのは都道府県民税事務所なので、法人住民税と同じ手続きで完了します。

設立直後の手続き(雇用関係)

一般社団法人の設立後の雇用関係の手続き


設立直後から雇用する従業員等がいる法人は、次の手続きが必要です。

労働保険関係

設立時から従業員がいる場合は、設立と同時に、労災保険と雇用保険への加入手続きをする必要があります。

後日、雇用を開始する場合は、雇用してから10日以内に手続きを行う必要があります。


労災保険(労働者災害補償保険)

管轄の労働基準監督署へ、保険関係成立届等を提出します。

アルバイト、パートなど雇用形態や労働時間、国籍に関係なく、雇用契約を結んで働いてもらう労働者がいれば、自動的に全員が労災保険の給付の対象となるので、法人は手続きが必要です。


雇用保険

管轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ、雇用保険適用事業所設置届等を提出します。

原則、すべての労働者が対象となりますが、非正規労働者の場合は適用の基準があります。

・31日以上の雇用の見込みがあること
 かつ
・1週間の所定労働時間が20時間以上あること

社会保険関係

設立時から従業員がいる場合は、設立と同時に、管轄の年金事務所で、健康保険・厚生年金保険への加入手続きをする必要があります。

加入が義務づけられているのは、次にような事業所です。

・法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの
 または
・常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所


雇用ではなく、業務を委託する場合や、報酬や実費のみ受け取る役員などは、上の手続きは関係ありません。

運営スケジュール

一般社団法人の運営スケジュール


一般社団法人を設立した後は、定款に定めた内容にもとづいて、事業を行い、理事会や総会を行っていきます。

運営スケジュールについて、設立直後・決算前・決算月・決算後に分けて、簡単に説明します。

一般社団法人の規模や定款の内容によって異なる点があると思いますので、ご注意ください。

設立直後

口座開設

金融機関で、法人の口座を開設します。

法人の銀行印、法人の登記簿(履歴事項証明書)が必要になりますが、金融機関によって必要なものが異なるので事前に確認しましょう。


設立時貸借対照表の作成

成立の日における貸借対照表を作成する必要があります。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、法人法)第123条1項に定められています。

決算前(事業年度終了前)

事業計画・収支予算の作成

事業年度が終了する前に、次の事業年度に関する事業計画や収支予算を作成します。

事業計画や収支予算については、法人法に規定はありません。

しかし、事業計画や予算といったものは、一般社団法人に限らずどの法人にとっても重要なものです。

規模の小さい法人も、簡単なものでいいので作成して、次の1年の事業に備えましょう。

決算月(事業年度終了月)

記帳(帳簿)を確定させる準備

記帳が漏れていないか、未払金や立替金の確認、現預金の通帳等との照合などを行います。

決算月が終わる前に、このような作業をできるところまでやっておきます。

決算後(事業年度終了後)

計算書類・事業報告書の作成

終わった事業年度の記帳(帳簿)を確定させたら、計算書類(貸借対照表、損益計算書)を作成します。

事業報告書には、次の事項を記載します。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第34条2項他)

1)法人の状況に関する重要な事項

2)理事の内部統制体制の整備についての決定・決議があるときは、その決定・決議の概要及び当該体制の運用状況の概要


理事会の開催

理事会を設置している一般社団法人は、定款で定めたとおりの方法で招集手続きを行い、理事会を開催します。

計算書類・事業報告書について、理事会で承認を受け、定時社員総会に提出します。


定時社員総会の開催

定款で定めたとおりの期限内及び方法で招集手続きを行い、定時社員総会を開催します。

計算書類(貸借対照表、損益計算書)の承認を受けます。


貸借対照表等の公告

定時社員総会が終了したら、遅滞なく、貸借対照表(大規模一般社団法人は損益計算書も)を公告しなければなりません。

定款に定めた公告方法で、公告します。


税務申告

決算月から原則2か月以内に税務署に確定申告を行わなければなりません。

収益事業を行っていない非営利型の法人は必要ありませんが、収益事業に該当するか否かの判断が難しい場合があります。

税務署や税理士と相談するなどして、正しい手続きを行いましょう。

まとめ

今回は、一般社団法人を設立した後の手続きや運営スケジュールについて説明しました。

ポイントです。

・税金関係の手続きのため、税務署や都道府県民税事務所・市町村役場に法人を設立した届を提出します。

・従業員等を雇用する場合は、労働保険や社会保険に関する手続きが必要です。

・定款に定めた内容にもとづいて、事業を行い、理事会や総会を行っていきます。


運営を行っていく上で不明な点があったら、役所に聞いたり、定款を再確認したり、提携している専門家に尋ねたりしましょう。