著作権は自動的に権利が発生するのに、登録制度があるってどういうこと?

著作権の登録とは


著作権は登録しなくても自動的に権利が発生するのに、著作権の登録制度というものがあるらしい。

どういうもので、何のためにするの?

そうした疑問にお答えします。

著作権と知的財産権

著作権とは

著作権とは、著作者等の権利を保護するための権利です。

著作者とは、著作物を創作した人のことをいい、

著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものであり、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものをいいます。

例えば、論文、楽曲、絵画、写真といったものです。

著作権は、こうした著作物を無断で誰かに使われたり(コピーや上映など)、タイトルや内容を変えられたりしない権利のことです。

著作権と知的財産権

著作権は、知的財産権の一つです。

主に、人間の創造的活動により生み出されるもののことを知的財産といいます。

この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

知的財産基本法第2条2項より


知的財産権のそれぞれについて簡単に説明します。(特許庁のサイトを参照しています。)


特許権
発明を保護するための権利。新規かつ高度で産業上利用可能な発明が保護されます。

実用新案権
考案を保護するための権利。物品の形状、構造、組合せに関する考案が保護されます。

意匠権
意匠を保護するための権利。独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩等の意匠(デザイン)が保護されます。

商標権
商標を保護するための権利。商品・サービスを区別するために使用するマーク(文字、図形など)が保護されます。

育成者権
植物の新品種を保護するための権利。

その他の知的財産権
営業秘密、類似品の販売規制など、不正競争防止法によって保護を受ける権利。

著作権と特許権等との違い

特許権は、登録することで権利が発生します。

実用新案権、意匠権、商標権も同様です。

そして、原則として、出願から20年まで保護されます。


一方、著作権は、著作物を創作した時点で自動的に権利が発生します。

権利を得るために登録するなどの手続きは必要ではありません。

そして、発生以後、原則として著作者の死後70年まで保護されます。(保護期間といいます。)


しかし、登録が必要でない著作権にも、登録制度があります。

著作権の登録について

著作権の登録のいろいろ


著作権の登録には次のような種類と効果があります。

著作権の登録制度を利用するには、所定の書類で、文化庁に申請します。

実名の登録

無名又はペンネーム等で公表された著作物の著作者は、その実名(本名)を登録することができます。

登録すると、次のような効果が生まれます。

・著作物に著作者名を表示していなくても、登録を受けた者が著作者として推定されます。

・公表後70年だった保護期間を、死後70年に延長できます。

第一発行年月日等の登録

著作権者や、無名又はペンネーム等で公表された著作物の発行者は、著作物が最初に発行又は公表された年月日を登録することができます。

発行又は公表されたのはいつかという、著作物の保護期間の争いがあった場合、反証がない限り、登録された年月日に最初に発行・公表されたものと推定されるという効果が生まれます。

なお、発行や公表をせずに、著作物がいつから存在していたかを証明したい場合は、公証役場で確定日付の付与を受けるという方法があります。こちらの記事を参考にしてください。

創作年月日の登録

プログラムの著作物のみ、その著作物が創作された年月日の登録を受けることができます。

反証がない限り、登録されている日に当該プログラムの著作物が創作されたものと推定されます。

発行や公表は必要ありません。

著作権の移転の登録

著作権の譲渡があった場合、譲受人と譲渡人は、著作権を登録することができます。

著作権の二重譲渡の際、登録を受けた者が第三者に対抗できるという効果が生まれます。


なお、著作隣接権も移転の登録をすることができます。

著作隣接権とは、実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者といった、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている人に与えられる権利です。

出版権の設定の登録

出版権の設定があった場合、出版権者と複製権等保有者は、出版権を登録することができます。

出版権の二重設定の際、登録を受けた者が第三者に対抗できるという効果が生まれます。

まとめ

今回は、著作権の登録制度について説明しました。

ポイントです。

・著作権は、特許権等のように登録を行わなくとも、著作物を創作した時点で自動的に権利が発生します。

・よって、著作権の登録は必須ではありませんが、登録をすることによって、実名を非公表にしたまま保護期間を延長できたり、発行又は公表した日を明確に示せたり、権利関係を明確にすることができるようになります。


転ばぬ先の杖といいます。大事な著作物は登録制度を利用して、もしもの場合に備えることを検討するのがいいでしょう。

文化庁では、登録に関する相談は行っていませんので、登録申請の仕方など、ご不明な点は、お近くの専門家にお尋ねください。