認知症になるとどうなるの?認知症への備えや対処を知りたい

認知症の基礎知識


2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。

自分の親が認知症になったら、どうなるんだろう?

認知症への備えや対処は?

そのような疑問に、終活や相続のサポートを行う行政書士の私がお答えします。

認知症の原因

認知症とは、さまざまな脳の病気により、脳の働きが低下したために、さまざまな認知機能(記憶、判断力など)の障害が起こり、社会生活に支障をきたした状態をいいます。

認知症を引き起こす病気で一番多いのは、変性疾患と言われるもので、アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー型小体病など、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいき、脳が委縮する病気です。

次に多い病気は、血管性の認知症と言われるもので、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化が原因で、血管が詰まり、栄養や酸素が行き渡らなくなって、神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう病気です。


認知症の症状には、次のようなものがあります。

症状は、認知症の人に多く見られる「中核症状」と、症状が人によって異なる「行動・心理症状(BPSD)」に分けられます。

認知症の症状

認知症のいろいろな症状

中核症状

脳の障害により直接引き起こされる症状を中核症状といいます。

認知症になると多くの人にみられる症状で、次のような症状があらわれます。


記憶障害

加齢によって、食事のメニューを忘れてしまうといった「もの忘れ」をすることはあると思います。

しかし、食事をしたこと自体を忘れてしまったり、忘れた自覚がなくなるのが、認知症による記憶障害です。


見当識障害

時間の感覚が分からなくなったり、方向感覚が分からず迷子になったりします。

症状が進むと、周囲の人との関係がわからなくなります。


理解・判断力の低下

考えるスピードが遅くなったり、一度に処理できる情報量が減ったり、いつもと違うできごとで混乱をしやすくなったりします。


実行機能の低下

計画や段取りをたてて行動できなくなります。


行動・心理症状(BPSD)は、次のような症状のことです。

行動・心理症状(BPSD)

中核症状を原因として二次的に起こるものを、行動・心理症状(BPSD=Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)または周辺症状といいます。

本人のもともとの性格や、環境、人間関係など様々な要因と合わさって起こるため、人により症状が異なります。


行動症状といわれるものには、暴力、暴言、徘徊、拒絶、不潔行為 等があります。

心理症状といわれるものには、抑うつ、不安、幻覚、妄想、睡眠障害 等があります。


行動・心理症状(BPSD)は、ご本人との関わり方や環境を調整することで、症状を抑えたり和らげたりすることができるといわれています。


次に、認知症になる前の備えと、認知症になった後の対処について、法律上の手続きのことを中心に述べていきます。

認知症になる前の備え・なった後の対処

認知症になる前と後の対処

認知症になるとできなくなること

認知症になると、社会生活を送る上で、次のようなことができなくなります。

その前に、何ができなくなるかを知っておくことと、必要に応じた備えが必要です。


(1)預貯金の引き出し

認知症になり判断能力が欠如していると判断されると、金融機関により、本人の口座は凍結され、預貯金を引き出したり振込を行うことができなくなります。

本人の財産を守るための措置です。

認知症になった親の口座から子どもが預金を引き出す行為も基本的には認められていません。


(2)不動産の売買

売買契約を結ぶといった法律行為を行うときに、認知症などが原因で意思能力がない場合は、その行為(契約)は無効になります。(民法第3条の2)


(3)遺産分割協議への参加

遺産を法定相続分と異なる遺産の分け方をしたい場合は、遺産分割協議を行いますが、認知症になり意思能力が欠如している相続人が参加した遺産分割協議は有効になりません。

認知症の相続人に法定後見人をつけてから遺産分割協議を行うことになり、時間や費用がかかります。


(4)遺言書の作成

認知症になり意思能力が欠如しているときに作成した遺言書は、法的に有効となりません。


上の(1)~(4)への備えとしては、何ができるでしょうか。

(1)預貯金の引き出し・(2)不動産の売買・(3)遺産分割協議への参加の備えとしては、後見人制度があります。

親が認知症になる前であれば、親の希望する人(子どもなど)を後見人としておける任意後見契約が結べます。

そして、認知症になった後は後見人が認知症の本人に代わって、諸手続きができるようになります。


ブログ:親が認知症になる前に、知っておきたい後見人制度の基礎知識


(4)遺言書の作成については、親に元気なうちに書いてもらうよう、子どもたちが日頃から親に声掛けや相談をしておくとよいでしょう。

認知症かなと思ったら

認知症は軽度のものから重度のものまで、症状の程度が異なります。

認知症の前段階であり認知症とは診断されない軽度認知障害MCI=Mild Cognitive Impairment)と診断されるものもあります。

まだ判断能力や意思能力があるうちの軽い認知症であれば、本人が有効に法律行為を行える可能性もあります。


認知症に似た病気や、早く治療すれば治る認知症もあると言われています(政府広報オンライン知っておきたい認知症の基本より)。

認知症が疑われたら、まずかかりつけ医や専門医に受診することが重要です。

認知症に関する相談先は、次のような、自治体や政府の情報サイトから探すことができます。

〇とうきょう認知症ナビ 相談窓口

〇厚生労働省 認知症に関する相談先

まとめ

今回は、認知症の症状と、認知症になる前の備え・なった後の対処について書きました。

ポイントです。

・加齢によるものではなく認知症から来るものと疑われる症状に気づいたら、早めにかかりつけ医や相談機関に連絡をして、正しい対処法を知ることが大切です。

・認知症になるとできなくなる法律上の手続きについて、親が元気なうちに知っておき、もしものときの備えをすることが大切です。