社会事業をやるには、一般社団法人がいいか、他の法人形態がいいか
同じ志をもつ仲間と、社会事業をやりたいと思っている。
一般社団法人がいいだろうか。他の形態の法人の特徴も知っておきたい。
そうしたご要望に、法人設立サポートができる行政書士の私がおこたえします。
(2021年2月5日一部修正)
一般社団法人とは
一般社団法人とは、営利を目的としない法人で、2008年の公益法人制度改革により誕生した法人です。
営利を目的としない(非営利)というのは、事業で得た利益を、その団体の構成員に分配せず、事業の目的を達成するために使うことをいいます。
まず、2008年の公益法人制度改革について、少し触れたいと思います。
公益法人制度改革で変わったこと
「社団法人」と「財団法人」という分類から
↓
「社団法人」は「一般社団法人」と「公益社団法人」に、
「財団法人」は「一般財団法人」と「公益財団法人」に分かれました。
前の制度では、「社団法人」も「財団法人」も積極的に公益目的の事業を行う団体でなければなりませんでした。
しかし、今の制度(2008年12月~)になって、公益目的の事業であることを設立の要件にするのは、名前に「公益」と付く法人だけとなりました。
つまり、「一般社団法人」と「一般財団法人」の事業は、公益目的でなくともよくなりました。
今、「公益法人」といえば、「公益社団法人」や「公益財団法人」のことのみを指します。
担当の官庁が許可をすることで法人となれる仕組みだったのが、
↓
「一般社団法人」と「一般財団法人」は、登記ができれば設立できるようになりました。
名前に「公益」と付く法人は、今も、担当の官庁に事業の公益性を認められ設立を許可されて法人となります。
一方、名前に「一般」と付く法人の方は、法律に合うよう作成した定款を公証人に認証してもらい、登記がされれば、法人を設立できるようになりました。
この改革により、「一般社団法人」と「一般財団法人」は、設立しやすくなりました。
そして、公益性については「公益社団法人」と「公益財団法人」が、法令で明確な基準を定められて認定されることになりました。
次に、他の形態の法人との違いを見ながら、一般社団法人についてご説明します。
その他の法人との違い
現在、一般社団法人として事業を行っている団体の事業には、以下のように様々なものがあります。
資格認定事業、講座ビジネス、インストラクター育成、異業種連携事業、業界団体、ボランティア団体、障害者支援、研究機関など。
行う事業に制限はありません。
株式会社や、NPO法人を設立して、上と同じ事業をやるケースもあります。
さまざまな形態の法人があることを知った上で、一般社団法人を設立するのか、その他の法人とするのか、検討してください。
一般社団法人と一般財団法人の違い
公益法人制度改革により、共に名前に「一般~」と付いた「一般社団法人」と「一般財団法人」の違いについて説明します。
「一般社団法人」は、人の集まりに対しての法人、
「一般財団法人」は、お金の集まりに対しての法人、
です。
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」によって、設立要件などが定められています。
一般社団法人 | 一般財団法人 | |
設立時に必要な最低人数 | 設立の時は、社員2名、理事1名が必要 (重複可。よって、人員は2名いればよい) | 設立の時は、設立者1名、理事3名、評議員3名、監事1名 (設立者は重複可。よって、最低必要な人員は7名) |
財産 | 財産保有規制なし (資本金や出資金は要件になっていません) | 設立の時は、300万円以上の財産(動産、不動産)を出す必要あり |
理事等の選任機関 | 社員総会 | 評議員会 |
「社員」とは、一般社団法人の構成員のことです。
意思決定機関である社員総会に出席します。株式会社でいう株主にあたります。
「評議員」とは、一般財団法人の構成員のことで、意思決定機関である評議員会に出席します。
「設立者」とは、一般財団法人の設立時に、定款を作成し、財産を出す立場の人です。
一般社団法人と公益社団法人の違い
「一般社団法人」のうち、公益事業を行うことを主な目的としている法人は、申請をして認定されれば、「公益社団法人」になれます。
つまり、一度、「一般社団法人」になってからでないと「公益社団法人」にはなれません。
認定されるのは簡単なことではありませんが、いずれ「公益社団法人」を設立したい場合は、要件など、チェックしておいてください。
「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に設立要件などが定められています。
(その他、参考になるサイト 公益法人インフォメーション)
ちなみに、法人の数としては、「一般社団法人」約62,000、「公益社団法人」約4,200となっています(国税庁法人番号公表サイト, 2020年9月)。
一般社団法人 | 公益社団法人 | |
主な事業の目的 | 制限なし | 公益目的事業を行うこと |
主な設立基準 | 公証人によって定款が認証され、登記がされること | 担当の官庁に事業の公益性を認められ設立を許可されなければならない (主な認定基準) ・公益目的事業の比率が50%以上 ・遊休財産額(※)が、1年間の公益目的事業費の額を超えない ※具体的な使いみちが決まっていない財産のこと ・同一親族等が理事又は監事の3分の1以下 ・他の同一の団体の理事(監事)の合計数が理事(監事)の総数の3分の1を超えない |
一般社団法人とNPO法人の違い
非営利団体、そして公益目的事業というと、NPO法人(特定非営利活動法人)が印象に強いかもしれません。
NPO法人の方が、社会的信頼性は高いようです。
しかし、NPO法人の設立要件は、一般社団法人より手続きが多く、設立まで時間がかかります。
設立要件などは「特定非営利活動促進法」に定められています。
ちなみに、法人の数でいうと、「一般社団法人」約62,000に対して、「NPO法人」は約51,000あります(内閣府NPOホームページ, 2020年9月)。
一般社団法人 | NPO法人 | |
設立の仕方 | 登記をすること | 都道府県か内閣府により認可された後、登記を行う |
設立時に必要な最低人数 | 設立の時は、社員2名、理事1名が必要 (兼務可。よって、人員は2名いればよい) | 設立の時は、社員6名、理事3名、監事1名が必要 (兼務可。よって、人員は10名必要) |
事業目的 | 制限なし | 事業目的は定められた20種類に該当するものに限る |
設立にかかる時間 | 申請から設立まで2~3週間程度 | 申請から設立まで4~6ヶ月かかる |
設立にかかる費用 | 登録免許税6万円 | 登記手数料なし |
担当官庁への年次報告義務 | なし | あり (設立時には「設立趣旨書」「事業計画書」「収支予算書」を提出) |
一般社団法人と株式会社の違い
基本的な違いは、「一般社団法人」は営利を目的としない法人であり、「株式会社」は営利を目的とする法人という点です。
「一般社団法人」は、事業で得た利益を、その団体の構成員に分配せず、事業の目的を達成するために使います。
その他の主な違いは以下です。
一般社団法人 | 株式会社 | |
設立時に必要な最低人数 | 設立の時は、社員2名、理事1名が必要 (重複可。よって、人員は2名いればよい) | 設立時、1名いればよい |
意思決定機関 | 社員総会 | 株主総会 |
設立費用 | 約11万4千円 (内訳) 定款認証:約5万円(収入印紙代不要) 謄本作成代:約4千円 登録免許税:6万円 | 約24万円 (内訳) 定款認証:約5万円 収入印紙:4万円 登録免許税:15万円以上 |
税制面での優遇措置について
一般社団法人は、税金(法人税)の払い方で、2つに分類されます。
非営利型の一般社団法人
法人税法上の非営利型法人の要件を満たした場合、公益法人等として取り扱われ、収益事業から生じた所得のみが課税対象となります。
認定されるためには、定款に特定の事項を記載する必要があります。
非営利型以外の一般社団法人
全ての所得が課税対象になります。
なお、公益社団法人と公益財団法人は、公益目的事業は課税対象外で、収益事業からの所得は課税対象です。
NPO法人は、特定非営利活動に関連する所得は課税対象外で、収益事業からの所得には課税されます。
(国税庁HP資料より)
まとめ
今回は、資格認定事業を立ち上げることを例として、一般社団法人について、その他の法人との比較を中心にご説明しました。
ポイントは以下です。
・一般社団法人は、公益目的の事業でなくとも設立でき、登記できれば設立が可能。
・さまざまな形態の法人があることを知った上で、一般社団法人を設立するのか、他の法人を設立するのか、検討するとよい。
・一般社団法人は税制面で非営利型と非営利型以外の2種類あるが、どちらの形態をとるかは専門家に相談して決めるのがよい。
不明な点は専門家に聞くなどして、自分の事業の目的や効率、運営の仕方などに合う法人の形態を選んで設立しましょう。