株式会社を作るには、どういう流れで、何を決めて、どのような手続きが必要?

友人と数名で株式会社を作ろうと思っている。

株式会社を作る手続きについてを簡単にわかりやすく説明してほしい。

この記事を読むと、発起人1~数名で作る、規模の小さめの株式会社の作り方が分かります。

定款作成サポートをする行政書士の私が、株式会社を作る手続きを簡単にわかりやすく解説します。

株式会社の設立手順などを解説します


株式会社の作り方を、順を追って説明します。

発起人会を開催して、会社の基本事項を決める

発起人を決める

発起人は会社設立の企画者として、会社設立に関する全ての手続きを行う人です。

定款を作成したり、出資(株の引き受け)をしたりします。

設立後には少なくとも株主として、また取締役などに選任されれば役員として、会社の意思決定に関わっていくことになります。


発起人は、一人でも、複数人でも可能です。

ただし、人数が多すぎると、意見をまとめるのに時間がかかったり、全員分の捺印書類を集めるのに手間取ったりする点に注意が必要です。

複数いる場合は、発起人代表者(総代)を決め、総代が中心となって、設立に関する事務を執り行います。

法人、外国人、未成年者(15歳以上)も発起人になれます。

発起人会を開催する

発起人を決めたら、発起人会を開催して、(発起人が1名のときは一人で)会社の基本事項を決め、議事録に残します。

議事録は、決定事項を確認したり、必要に応じて、設立登記申請時に提出したり、出資金の払先である金融機関へ提出したりするために作成します。

議事録のタイトルは、発起人が1名の時は「発起人決定書」、発起人が複数の時は「発起人会議事録」とします。

会社の基本事項

発起人会では、次のような会社の基本事項を決めます。

・商号(会社名)

・会社の目的(事業目的)

・本店の所在地

・機関設計(株主総会、取締役、取締役会、監査役等の設置の要否について)

・役職名と役員氏名

・設立時の出資額(資本金の額)

・株式に関すること(会社設立時の株数、会社設立時の株価、将来発行可能な株数)

・発起人に関すること(発起人の総代、発起人それぞれが引き受ける株数など)

・出資金の払込先金融機関


これら会社の基本事項は、定款に記載する事項ですので、詳細は次でご説明します。

定款を作成し、公証役場で認証を受ける

定款の作成ポイントなど

定款を作成する

会社の憲法といわれる定款は、発起人が作成して、認証を受けます。

会社の基本事項や、その他必要な事項を記載します。

定款に記載する内容は、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類に分けられます。

絶対的記載事項

定款に必ず記載しなければならない最も重要な事項です。

1つでも記載が欠けていると、定款は無効になります。


商号

会社の顔ですので、覚えやすさ、呼びやすさなども考慮しつつ、慎重に決めましょう。

「株式会社」の文字を必ず入れます。

日本の文字の他に、ローマ字やアラビア文字、認められた記号も使えます。(参照:法務省HP

他社との「同一住所、同一商号」は認められません。有名な会社の商号も使えません。


目的

他人から見て何をする会社か分かるように取扱事業を記載します。

「設立後すぐに始める事業」、「将来始める可能性のある事業」、「興味のある事業」について、記載しましょう。

定款に記載していない事業は行うことができませんので注意が必要です。

また、原則として、日本の文字しか使えません。

なお、許認可を必要とする業種については、定款に記載すべき事項(事業目的)がある場合があるため、関係官庁へ事前に確認したほうがいいでしょう。


本店の所在地

定款に記載する本店所在地の住所は、市区町村までとするのがよいでしょう。

詳細な住所すべてを定款に記載した場合、変更のたびに登記を変更しなければなりません。

登記の変更には、原則として3万円の登録免許税といった費用がかかります。


設立に際して出資される財産の価額(又はその最低額)

資本金の額と同額とし、(最低限度額ではなく)総額を記載するケースが多いです。

また、資本金は1円からでも株式会社は作れますが、実際の運転資金として適切か、第三者からみて信用を得られる額であるかを考慮して決めます。


発起人の住所・氏名

全ての発起人の氏名・住所を、印鑑登録証明書に記載されている通りに記載します。

それぞれで受け持つ出資金額(株式の数と価額)も併せて定款に記載します。


発行可能株式総数(会社法37条1項2項)

将来的に何株まで発行するかを決めておきます。

(会社法27条の)絶対的記載事項には入っていませんが、定款に記載するのが一般的です。

上限は、株式の譲渡に制限をつける会社(非公開会社。小さな規模の会社が一般的に採用する形態)にはありませんが、設立時発行株式数の4~10倍とする会社が多いようです。

ポイントをおさえましょう

相対的記載事項

定款に必ずしも記載する必要はありませんが、記載しないと法的効力が生じない事項なので、必要な事項は必ず記載します。

主な相対的記載事項を以下にご紹介します。


株式の譲渡制限

株式の譲渡には会社の承認を必要とする旨を記載できます。会社の望まない株主の出現を防ぐことができます。
規模の小さな会社は、譲渡制限を設けるのが一般的です。


基準日

権利を行使できる株主を確定する日を定めます。


株主総会の招集時期

どんなに小さな会社でも、株主総会は年に1回必ず開催しなければなりません。いつ招集するかを記載します。


機関の設計、役員の任期

株式会社の機関とは、株主総会、取締役、取締役会、監査役等のことを指します。

「株主総会+取締役」が一番シンプルな機関設計です。

対外的な信用度を上げたいなら「株主総会+取締役会(取締役3人以上)+監査役」を検討しましょう。

役員の任期も記載しましょう。

任意的記載事項

定款に記載がなくとも法的効力のある事項ですが、定款に記載することで社内外に示すことができ、会社運営がしやすくなる面があります。

ただし、多く記載しすぎて不自由な会社運営にならないよう注意が必要です。

変更するには株主総会の決議が必要です。

主な任意的記載事項を以下にご紹介します。


定時株主総会の開催時期株主総会の議長

毎年1回開催する定時株主総会の開催時期や、株主総会の議長(取締役が務める等)について記載します。


事業年度

1年以内とする会計上の年度です。
決算日(事業年度の最終日)から2か月以内に納税する必要があるので、会社設立日から決算日までは余裕のある期間とするのがよいでしょう。
事業や税理士の繁忙期を避けることも考慮しましょう。


公告の方法

記載がなければ、官報の公告とみなされます


役員の人数

「取締役は3名以上、監査役は2名以内」のように、書き方は自由です。


設立時取締役等

設立時役員等は、発起人の議決権(一株につき一個の議決権)の過半数の賛成で選任されます。


定款に記載するにはどのような文言が適しているかについては、公証人連合会のHPに定款のサンプルの掲載がありますので、参考にできます。

定款の認証

定款の認証は、公証役場に依頼します。

書面で申請する場合は、基本的には3部(公証役場用、法務局登記用、会社保存用)を用意します。


電子申請も可能です。

電子申請をするためには、必要なソフトや機器等の準備が必要になるため、行政書士などの専門家に依頼されるとよいでしょう。

電子申請をすると、収入印紙分の4万円が不要になるメリットがあります。(専門家への報酬等は別途ご確認ください。)


定款の認証が済んだ後は、次の手続きに移ります。

出資金の払込、登記の申請、官公署への届出

関係官庁で手続きをして終わりです

出資金の払込

発起人は、それぞれで受け持った分の出資金(株式の価額)を金融機関に払い込みます。

一般的には、発起人総代の個人名義の口座に払い込みます。

多くの場合、この口座が会社の今後のメインバンクになります。

登記申請に、このときの払込証明書と預金通帳のコピーが必要になります。

登記の申請

本店所在地を管轄する登記所に、登記申請書等の必要書類一式を提出して、会社設立登記の申請をします。

会社設立の登記が完了すると、正式に会社として成立し、法人格を取得しあことになります。

登記をすると、商号・目的・本店所在地・資本金額などが登記簿に記載されます。

登記簿は誰でも見ることができます。

登記が完了したら、すぐに登記事項証明書(登記簿謄本)、印鑑証明書、印鑑カードを取得します。

官公署への届出

登記が完了したら、会社設立の届出を、税務署、都道府県税事務所で行います。

また、社会保険事務所での社会保険への加入、従業員がいる場合には労働基準監督署・公共職業安定所での労働保険への加入手続きが必要です。

まとめ

今回は、株式会社を作る手続きを簡単に解説しました。

以下がポイントです。

・発起人を決めたら、発起人会で会社の基本事項を決め、それを議事録に残します。

・定款に記載すべき内容をきちんと理解して、定款を作成し、認証を受けましょう。

・出資金の払込、登記の申請、官公署への届出までをきちんと済ませたら、新会社の始動です。


株式会社を作る手続きの詳細は、ここでは説明しきれませんし、作る会社の規模によって、機関設計の仕方、定款への記載内容、手続書類等も変わります。

自分で調べても分からない点があるときは、行政書士などの専門家を頼るのもいいでしょう。


また、設立してから会社運営を継続して軌道に乗せるためには、やはり事前のマーケティングや事業計画が重要です。


なお、法人を作るにあたって、株式会社にするか、合同会社にするか、または社団法人等にするかでまだ迷っている場合は、以下の記事を参考にしてください。