法人を作りたい!株式会社、合同会社、社団法人、NPO法人…どれを選んだらいい?

事業を起こしたくて、法人を設立したいのだけれど、株式会社、合同会社、社団法人、NPO法人…いろいろな形態があって、どの法人を作ったらよいのか分からない。

そのような疑問に、法人設立手続をサポートする行政書士の私が、分かりやすく解説します。

営利法人と非営利法人

法人には、「営利法人」と「非営利法人」があります。

「営利法人」とは、事業で得た利益を、株主などへ分配することを目的とした法人です。
株式会社、合同会社、合資会社、合名会社などがあります。

「非営利法人」は、事業で得た利益を、その団体の事業目的を達成するために使います。
社団法人、財団法人、NPO法人、学校法人、社会福祉法人などがこれにあたります。

法人を設立をする際、自分の団体は利益の分配をどうするのかについて、考える必要があります。
また、法人の形態によってメリット・デメリットがあります。
以下にご説明します。

株式会社と合同会社

法人数全体での内訳をみると、「株式会社」は約254万社(全体の93.3%)、次いで「合同会社」は約10万社(3.6%)と、この2形態の法人が全体の約97%を占めています(国税庁 会社標本調査 平成30年度分 )。

「株式会社」は、経営者が株式を発行して資金調達を行い、株主(出資者)に利益を分配する法人です。
「合同会社」は、出資者が経営を行う、持ち株会社に分類されます。2005年の会社法制定で新たに導入されて以来、設立数を年々増やしています。

「合同会社」と同じ持ち株会社である、「合資会社」は14,165社(法人全体の0.5%)、「合名会社」は3,369社(0.1%)と数も割合も少なくなっています※。

よって、この記事では、営利法人については、「株式会社」と「合同会社」について説明します。

株式会社と合同会社のメリット・デメリット

まず、株式会社と合同会社のメリット・デメリットについてご説明します。

形態メリットデメリット
株式会社・知名度が高い
・株式による資金調達が可能  
・登録免許税は合同会社の倍以上の15万円(※資本金の額によってはこれより高くなります)
・株主総会、取締役会の運営など、法定のルールが多い
・利益の配分を自由に決められない(株数に応じて配分)
合同会社・登録免許税は株式会社の半額以下の6万円
・出資者=経営者のため、速やかに重要な意思決定ができる
・利益の配分を自由に決められる

・創設されて15年の形態のため、やや知名度が低い
・資金調達の方法が少ない


次に、株式会社と合同会社の設立手続きの基本的な流れを見てみましょう。

株式会社の設立手続きの流れ

1.発起人による定款の作成

 基本事項(会社の目的・事業内容、社名、本店所在地、設立時の出資額など)を決定し、定款を作成します。

 会社の目的の書き方が不十分で許認可の申請が下りなかったということにならないよう、定款の内容は行政書士等の専門家に見てもらい、入念な準備を行うのがよいでしょう。

 また、定款は会社設立後に変更できますが、登記事項の変更を行う場合は、費用が発生しますのでご注意ください。


2.公証人による定款の認証

 費用は、認証手数料5万円、 収入印紙代4万円かかりますが、電子定款にすれば収入印紙代は不要です。

 電子定款を作成するために必要な設備(ソフト等)を有していない持っていない場合は、行政書士等の専門家に依頼することができます。


3.発起人による出資の履行

 発起人は、引き受けた株数に相当する金額を金融機関に振込みます。


4.設立登記を行い、会社成立

 本店所在地を管轄する法務局などに設立登記を申請します。

 登録免許税15万円または資本金の1000分の7のいずれか多い方の額を支払います。

合同会社の設立手続きの流れ

基本的な流れは、株式会社とほとんど同じですが、定款に公証人の認証は不要という点が大きな相違点です。

1.社員になろうとする者による定款の作成

  社名、事業内容、本店所在地、資本金の額、決算期などを決めます。

2.社員になろうとする者による出資

  定款で定めた額を振り込みます。

3.本店所在地を管轄する法務局などに設立登記申請

  登録免許税 6万円または資本金の1000分の7のいずれか多い方の額を支払います。


ここでは、営利法人である、株式会社と合同会社の特徴や設立手続きについて、説明しました。

資金を広く集めていずれ大きな法人としたい場合は「株式会社」、より簡単な手続き・安い費用で設立し、出資者と経営者を同じくしたい場合は「合同会社」でしょう。


次に、非営利法人である、一般社団法人とNPO法人について、その特徴と設立手続きを見てみましょう。

一般社団法人とNPO法人

非営利法人の数の内訳では、「一般社団法人」約6万、「公益社団法人」約4,200、「NPO法人」約5万というように、「一般社団法人」が数では一番多くなっています。

「一般社団法人」の数は、営利法人を加えた全法人数の第3位に位置します。
2008年12月の「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」の施行で、容易に一般社団法人が設立できるようになり、数が増加したといわれています。

なお、「公益社団法人」は、「一般社団法人」が申請する法人であり、これから法人の設立をする場合には選択できない形態のため、ここでは、「一般社団法人」と「NPO法人」についてのみご説明します。

一般社団法人とNPO法人のメリット・デメリット

形態メリットデメリット
一般社団法人

・登記だけで設立できる
・設立者数は2名以上
・事業目的は自由
・申請から設立まで2~3週間程度
・年次報告義務なし

・(NPO法人よりは)社会的信頼性が高くない
・登録免許税6万円
NPO法人・社会的信頼性が高い
・登録免許税なし
・認可されないと設立できない
・設立者数は10名以上
・事業目的は定められた20種類に該当するものに限る
・申請から設立まで4~6ヶ月かかる 
・年次報告義務あり

次に、一般社団法人とNPO法人の設立手続きの基本的な流れを見てみましょう。

一般社団法人の設立手続きの流れ

1.定款等書類の作成

 事業の目的、法人の名称、主たる事務所の所在地、事業年度などと併せて、2名以上の社員と1名以上の理事を決定して、定款に記載します。

2.公証役場での定款認証

 定款は認証手続きが必要です。
 定款の内容は、事前に行政書士等の専門家に確認依頼することが可能です。 

3.法務局への登記申請

 認証された定款等の登記書類を、法務局に提出します。

4.設立後、法人設立届出書等を税務署等に提出


次に、NPO法人の設立手続きの流れについてご説明します。

「一般社団法人」の設立手続きは、「株式会社」や「合同会社」と類似点が多いのに比べ、「NPO法人」の設立手順がとても特徴的であることがわかると思います。

NPO法人の設立手続きの流れ

1.所轄庁(都道府県、市町村など)への申請

 まず、特定非営利活動促進法で定められた20種類の事業に該当するか確認をします。
 事業の内容が、営利を目的としないこと、宗教活動・政治活動を主な目的としないことも要件になっています。

 定款等書類を作成したら、所轄庁へ申請します。
 定款には、事業の目的、法人の名称、定められたどの事業の種類に該当するか、主たる事務所の所在地などを記載します。


2.縦覧・審査・認証

 所轄庁(都道府県、市町村など)が行います。
 申請内容の所定の項目を1か月間公開(縦覧)し、申請から3カ月以内に審査を行い、認証または不認証の結果が申請者に通知されます。 


3.法務局で設立登記

 認証された通知があった日から2週間以内に法務局で設立の登記を行います。


4.所轄庁(都道府県、市町村など)へ設立届

 登記の完了を受けて改めて設立登記完了届出書とともに登記事項証明書、財産目録などを都道府県・市区町村などの所轄庁に届け出ます。

ここでは、非営利法人である、「一般社団法人」と「NPO法人」について説明しました。
短期間・少人数で事業を始めたいなら「一般社団法人」、準備期間が長くなっても社会的信頼性の高い法人を作りたいなら「NPO法人」でしょう。

まとめ

この記事では、法人の設立について書きました。
ポイントをまとめると、次の通りです。

・事業による利益の分配をどうするか、目的に合った法人を設立しましょう。

・営利法人の設立を決め、資金を広く集めていずれ大きな法人としたい場合は「株式会社」、より簡単な手続き・安い費用で設立し、出資者と経営者を同じくしたい場合は「合同会社」

・非営利法人の設立を決め、短期間・少人数で事業を始めたい場合は「一般社団法人」、準備期間が長くなっても社会的信頼性の高い法人を作りたい場合は「NPO法人」

法人を設立するときは、その目的を見定めると同時に、設立のための人数、費用、期間などへの注意が必要です。