在留資格「技人国」の派遣就労、2026年の最新運用と企業が備えるべき実務対応

在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)で外国人を派遣就労させる企業にとって、審査の運用は大きく変わっています。
出入国在留管理庁は、2026年3月9日申請分から派遣形態の提出書類を変更し、令和8年7月には取扱いを更新しました。
本コラムでは、変更の背景、新しい運用の内容、7月の更新点、そして今後の実務対応を順に解説します。
在留資格「技人国」の派遣就労が問題視される背景
技人国で認められる活動と派遣という働き方
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)は、理系・文系の専門知識や、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事する外国人のための在留資格です。
派遣形態では、雇用契約を結ぶのは派遣元ですが、実際に業務を行うのは派遣先です。
そのため審査では、派遣先でどのような業務に従事するのかが重要になります。
派遣元の書類が整っていても、派遣先での業務が技人国の活動に該当しなければ、在留資格に該当しない就労となるおそれがあります。
現場作業に従事させてしまう背景
従来、派遣形態での就労では、本来の在留資格では認められない現業等に従事させるケースが見られました。
意図的に行わせる場合だけでなく、知識不足が原因となる場合もあります。
たとえば「大学の工学部出身であれば、製造現場のどの職種でも就労できる」という誤解です。
現場作業は原則として認められていません。
情報の非対称性と入管庁の動き
もう一つの要因が、情報の非対称性です。
職業紹介事業者が業務内容の不適合を知りながら、成約を優先して雇用主に正確な情報を伝えず、更新の時期には連絡が取れなくなるケースもあります。
2025年8月には、出入国在留管理庁が技人国の派遣労働に関する実態把握に乗り出す方針であると報じられました。
こうした状況を背景に、派遣先での活動実態をより厳格に確認する運用へと見直しが進んでいます。
2026年3月から始まった新しい運用
申請時点で派遣先を確定させる
出入国在留管理庁は、2026年2月に「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」を公表しました。
派遣形態で就労する場合の提出書類は、2026年3月9日申請分から変更されています。
最も大きなポイントは、申請時点で派遣先が確定していない場合、在留諸申請の許可等を受けることができないとされている点です。
したがって、必ず派遣先を確定させたうえで申請する必要があります。
派遣元・派遣先の双方が誓約書を提出する
派遣契約に基づいて就労する場合、「申請人の派遣労働に関する誓約書」が、派遣元用と派遣先用の2種類、参考様式として示されています。
派遣元は、提出書類の内容に虚偽がないこと、在留資格の活動範囲と申請書上の「活動内容詳細」を申請人と派遣先に説明して理解させていること、入管による調査に応じること、派遣先でも調査に応じることを確認していることなどを誓約します。
派遣先も、書類の内容に虚偽がないこと、活動範囲と活動内容詳細を理解したうえで申請人を当該活動に従事させること、入管による調査に応じることを誓約します。
派遣先が書面で責任を負う形になった点は、実務上、大きな変化といえます。
在留期間の決定と派遣先への直接確認
派遣形態で就労する場合は、派遣契約期間に応じた在留期間が決定されます。
また、在留審査の際には、派遣元のほか、派遣先に対しても申請人の業務内容や活動状況について直接確認を行う場合があるとされています。
提出書類は、申請の種類によって異なります。
認定証明書交付申請と変更許可申請では、誓約書、労働条件通知書(雇用契約書)、労働者派遣個別契約書の写しなどが示されています。
在留期間更新許可申請では、これらに加えて、派遣元管理台帳、派遣先管理台帳、就業状況報告書が必要です。
2026年7月の更新で示された「採用直後の研修」の取扱い
原則は変わらず、限定的な取扱いが示された
出入国在留管理庁は、「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」を2026年7月に更新しました。
ここでは、派遣先を申請時に確定できない場合の取扱いが追記されました。
ただし、申請時点で派遣先を確定させるという原則が変わったわけではありません。
新規採用者に対して行う採用直後の研修を行った後でなければ派遣先が決定されない場合に限り、その事情を踏まえて審査を行うとされています。
単に派遣先が決まっていないという理由だけで認められるものではない点に、注意が必要です。
提出する資料と、派遣先決定後の対応
この取扱いを利用する場合は、派遣先用の誓約書と労働者派遣個別契約書に代えて、研修内容を具体的に示す資料を提出します。
あわせて、派遣先で従事する予定の業務内容の範囲を具体的に記載した、派遣元との労働条件通知書(雇用契約書)も必要です。
さらに、派遣元用の「申請人の派遣労働に関する誓約書」と、「申請人の派遣先の決定に関する誓約書」の提出も求められます。
派遣先が決まった後は、派遣先用の誓約書を速やかに作成し、派遣元の責任において次回の在留期間更新許可申請時まで適切に保管します。
次回の申請時には、当初提出できなかった派遣先との誓約書と労働者派遣個別契約書を提出します。
合理的な理由なく提出できないなど、誓約に違反すると認められる場合は、この取扱いの対象外となるほか、今後の審査における消極事由になるとされています。
書類の省略は「審査基準の緩和」ではない
2025年12月から、在留資格「留学」から技人国または「研究」への変更許可申請について、一定の場合に提出書類の省略が可能となりました。
対象は、本邦の大学卒業(予定)者、一定の海外の優秀大学卒業者、「留学」から変更許可を受けた者を現に受け入れている機関で就労する場合などで、省略が認められる書類はカテゴリー2と同様です。
なお、派遣形態での雇用は、この省略の対象外とされています。
省略されるのはあくまで提出書類であり、審査基準が緩和されたわけではありません。
在留資格該当性、上陸許可基準適合性、在留の適法性という本質的な要件は変わらず、事実と異なる説明で書類を省略した場合には、虚偽の申請と判断される可能性があると入管庁も注意を促しています。
今後の見通しと、派遣元・派遣先が備えるべき実務対応
今後は「書類が揃っているか」だけでなく、「実態が伴っているか」がより問われます。
派遣元・派遣先・外国人本人の三者で申請した業務内容を共有し、申請書、雇用契約書、派遣個別契約書、実際の業務内容を一致させておくことが大切です。
派遣形態を活用している企業様は、現在の業務内容が技人国の活動範囲に適合しているか、改めて点検することをお勧めします。
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