事前届出の該当性についてー外為法に基づく対内直接投資等に関する重要な手続き

日本企業に対する外国からの投資は、近年ますます増加しています。

日本は、国の経済安全保障や安全等に係る技術などが流出することなどを防ぐ観点から、外国からの一定の投資については外為法に基づく届出か報告が求められています。

本コラムでは、事前届出の対象となる要件、届出後の所管省庁による審査、事前届出の免除制度について、実務的な観点から解説します。


※この記事は、2025年11月改訂の「外為法Q&A(対内直接投資・特定取得編)」(日本銀行)を参考にしています。

対内直接投資と事前届出

対内直接投資

外国から日本へ投資を行うとき、日本政府へ、届出か報告を行う必要がある場合があります。

この届出・報告制度は、外国投資家(外国法人や外国人)による対内直接投資を対象としています。

対内直接投資の代表的なものは、外国法人や外国人が、日本への投資に伴い、日本企業の株式を一定割合以上取得するケースです。

対内直接投資の内容により、投資より前に届け出るもの(事前届出)なのか、投資の後に報告するもの(事後報告)なのかに分けられます。


外為法と対内直接投資についてはこちらのコラムもご参照いただけます。

事前届出の対象となる業種

事前届出の対象となるのかを判断する上で重要なのが、投資対象となる日本企業の事業内容です。

外為法では、経済安全保障等の観点から「指定業種」が定められており、これに該当する事業を営む日本企業への投資は、事前届出の対象となります。

指定業種には、通信、IT、インフラ、医療関連など、幅広い分野が含まれており、実務上は定款や事業内容の詳細な確認が不可欠です。

なお、事前届出の内訳を見てみると、2019年以降は、サイバーセキュリティ関連業種が50~60%占めています。次いで、インフラ関連となっています。

財務省 外為法・投資審査制度 アニュアルレポート 年次報告書(2024年度)より

指定業種とコア業種

指定業種について

上でも述べたように、経済安全保障等の観点から、国の安全や公の秩序の維持等に支障を及ぼすおそれがある事業領域は「指定業種」と定められています。

指定業種を営む日本企業に対して外国投資家が出資等を行う場合、取引を実行する前に財務大臣および事業所管大臣あてに「事前届出」を提出し、政府による審査を受けなければなりません。

指定業種の具体例としては、以下のような分野が挙げられます

  • 軍事・安全保障関連: 武器、航空機、原子力、宇宙開発関連
  • 重要インフラ関連: 電気、ガス、通信、放送、鉄道等
  • 技術・医療・資源関連: 半導体製造装置、軍事転用可能な技術を用いる製造業、感染症用医薬品、重要鉱物資源に係る鉱業など

また、一定の要件において、投資先である日本企業の子会社または議決権半数子会社が営む事業に指定業種に属する事業が含まれている場合も、事前届出の対象となります。

コア業種とは

指定業種はさらに「コア業種」と「コア業種以外の指定業種」(非コア業種)に区分されています。

コア業種とは、指定業種の中でも特に国の安全を損なうリスクが高い、極めて重要度の高い分野です

武器、原子力、宇宙開発、サイバーセキュリティ、重要インフラ(通信・電力等)などがこれに該当します。

経済産業省国際投資管理室「外国投資家から投資を受ける上での留意点について」2025年5月

また、上場企業の事前届出該当性については、財務省が公開している資料が参考になります。

(財務省>本邦上場会社の外為法における対内直接投資等事前届出該当性リスト

所管省庁による審査

日本銀行への届出

事前届出は、日本銀行を窓口として提出されますが、詳しい審査は所管省庁が行います。

日本銀行は形式的な受付機関として機能し、届出内容を関係省庁に回付する役割を担っています。

したがって、届出書の内容は、所管省庁による審査を前提として作成する必要があります。

指定業種のうちのコア業種か非コア業種か、及び、その事業所管については、事前届出業種(指定業種)の参考資料_早見表(経済産業省サイト)が参考になります。

所管省庁による審査の観点

審査では、当該投資が日本の安全保障や公の秩序に与える影響が主に検討されます。

具体的には、対象会社の技術内容、外国投資家の属性、投資後の経営関与の程度などが評価されます。

特に先端技術や重要インフラに関連する事業については、慎重な審査が行われる傾向があります。

審査期間と実務上の留意点

原則として、事前届出後は一定期間の待機が必要とされ、この期間中は投資の実行が制限されます。

通常は30日程度とされていますが、審査内容によっては短縮または延長されることがあります。

実務上は、資金調達スケジュールや契約条件に影響を与えるため、余裕を持った計画が求められます。


審査の結果によっては、「一定の条件」を付された上で投資が認められる場合があります。

例えば、特定の情報へのアクセス制限や、役員就任に関する制約などが課されることがあります。

また、より厳しいケースでは、投資内容の変更や中止を求める勧告がなされる可能性も否定できません。


事前届出が必要であるにもかかわらず、届出を行わずに投資を実行した場合、外為法違反となるリスクがあります。

この場合、行政上の措置や罰則の対象となる可能性があり、企業の信用にも重大な影響を与えます。

そのため、該当性の判断を誤らないよう、専門的な検討が不可欠です。

無届等が判明した場合は、速やかに財務省に相談しましょう。

事前届出の免除制度

対日投資の円滑化と安全保障の確保を両立させるため、一定の条件を満たす取引について事前届出を不要とする仕組みが「事前届出の免除制度」です。

免除を受けるための遵守基準

免除制度を利用するためには、外国投資家が日本の安全保障を脅かすような行動をとらないよう、以下のような遵守基準を守る必要があります。

・外国投資家自らまたはその関係者が、投資先の日本企業等の取締役または監査役に就任しないこと。

・ 指定業種に属する事業の譲渡・廃止の議案を、投資先の日本企業等の株主総会に自らまたは他の株主を通じて提案しないこと。

・指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと。

対象業種による免除条件の違い

免除制度の適用条件は、投資先の日本企業が営む業種によって段階的に異なります。

  • コア業種以外の指定業種
    上記の遵守基準を守ることを前提として、事前届出が全面免除されます。
  • コア業種(特にリスクが高い業種)
    <上場企業の場合>
    遵守基準を守ることに加えて、出資比率および議決権比率が10%未満の取得に限り免除されます。
    10%以上の取得になる場合や、外国政府の支配下にある投資家などの場合は、免除は適用されず事前届出が必要です。

    <非上場企業の場合>
    コア業種を実施している非上場企業への投資等については、免除は適用されず事前届出が必要です。

事後報告は必要

免除制度を利用して投資等を実行した場合、事前届出は不要となるものの、実行後45日以内に日本銀行へ「事後報告書」を提出する義務が生じます。

まとめ

外為法に基づく事前届出制度は、対象要件の判断、届出後の審査対応、審査結果への対応、そして免除制度の活用まで、いずれも専門的な知識が求められます。

特に、投資スキームの設計段階から届出の要否を確認することで、手続の遅延やリスクを回避することが可能となります。

実務においては、最新の法令や運用を踏まえた上で、慎重かつ的確に対応することが重要です。

なお、当事務所では外為法の対内直接投資等の届出・報告のオンライン申請を代行しています。

2028年4月から、全ての外為手続きは、原則オンライン提出になります。


※2026年6月には外為法の一部を改正する法律案が公布され、対内直接投資審査制度の厳格化が進みました。最新の法令および省令・ガイドラインの動向をご確認の上、慎重にご対応ください。