電子帳簿保存法への対応は、いつまでに何を用意しておけばいいの?
インボイス制度、電子帳簿保存法…と、帳簿書類等に関する制度や法の改正がされているけれど、いつまでに何をしたらいいのか、何ができるようになるのか、よくわからない。
一部、義務化されるものもあるらしい。
そのような疑問に、帳簿書類の記帳を代行する行政書士の私がお答えします。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、帳簿書類等を電子化して業務効率を図ることを目的として、1988年に成立した法律です。
しかし、制度を利用するための手続きが面倒・複雑であるなどの理由で、あまり普及しませんでした。
そこで、社会のデジタル化に併せ、経理のデジタル化・生産性の向上等を目標に、制度を利用するための手続きを簡素化するなどした内容の改正が行われました(2022年4月1日施行)。
帳簿書類等の電子データの保存について、次の3つの制度に分けて、要件などが定められています。
①電子帳簿等保存制度、②スキャナ保存制度、③電子取引データ保存制度
最後の③電子取引データ保存制度は、義務化されるものですので、今回はこちらを中心に説明します。
義務化される電子取引データ保存制度
電子取引データ保存制度
2024年1月1日から、請求書・領収書・契約書・⾒積書などの電子データ(電子ファイル等)を送付したり、受け取ったりした場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存しなければいけません。(国税庁パンフレット)
電子データをプリントアウトして紙で保存することができなくなります。
(紙の請求書等については、紙のまま保存しておくことで問題ありません。)
電子データとして保存するには、次の要件をすべて満たす必要があります。
※1 索引簿のサンプル(国税庁)
※2 事務処理規程サンプル(国税庁)法人用 個人事業者用
特例事項
上の表の 3.検索機能の確保 については、次のような特例があります。
・売上高1,000万円以下の事業者等は、全ての検索要件は不要。
・税務職員の質問検査権行使に基づくダウンロードの求めに応じる場合は、必要な項目の記録だけでよく、範囲指定や組み合わせ検索機能は不要。
また、タイムスタンプの付与やデータ保存システムを用意するのが困難な個人事業者や中小企業は、事務処理規程の備付けで代替できることも、特例の一つと言っていいでしょう。
さて、電子取引データの保存については、2023年中に何を準備したらよいか、分かったでしょうか。
電子データでやりとりした請求書等は、電子的に保存が必要になります。
そして、紙の請求書等を授受したときは、紙のまま保存しておくことで問題ありませんが、要件を満たせば、電子データとして保存しておくことが可能です。
利用可能な制度
スキャナ保存制度と電子帳簿等保存制度は、義務ではなく、利用したい方が利用する制度です。
保存が必要な帳簿や書類を、紙ではなく電子データとして保存することで、保管スペースが不要となるほか、業務のデジタル化による生産性向上やテレワーク推進等にもつながるとして、国は推奨しています。
ただし、保存の要件が決められていますので注意が必要です。
スキャナ保存制度
スキャナ保存の対象となる書類は、契約書、見積書、注文書、納品書、検収書、請求書、領収書 などです。
スキャナ保存を行うための要件は細かく規定されていますが(国税庁パンフレットp.2)、用意すべきことは次のようなことです。
1)タイムスタンプを付与できる会計ソフトやシステムを導入する
タイムスタンプは、一般財団法人日本データ通信協会が認定するものである必要があります。
認定を受けたタイムスタンプ事業者には、「タイムビジネス信頼・安心認定証」が交付されています(参照)。
タイムスタンプの代わりに、データの訂正や削除を行った履歴が残るような、電子帳簿保存法に対応した会計ソフトやシステムを利用することも可能です(参照)。
要件に合う会計ソフトやシステムを導入しましょう。
2)検索機能を確保する
電子取引データと同様に、次のような条件を備えた検索機能を確保します。
・記録項目:取引年月日その他の日付、取引金額、取引先
・日付又は金額の範囲指定により検索できること
・2つ以上の記録項目を組み合わせて条件設定できること
3)スキャナによる電子化保存規程を定めておく
検索のための記録内容を入力する期限を最長2か月延長するために、規程を定めておきます。
規程がない場合は、記録事項の入力をその受領等後、速やか(おおむね7営業日以内)に行うこととなっています。
規程のサンプルは国税庁のサイトにあります。
電子帳簿等保存制度
請求書や領収書、契約書等に加えて、決算書類(貸借対照表や損益計算書)や仕訳帳・書類を、一貫して会計ソフト等で作成した電子データのまま保存するのが電子帳簿等保存制度です。
電子帳簿保存時の要件は、真実性の確保や、可視性の確保が要件となっています。国税庁のサイトをご確認ください。
ペーパーレス化、デジタル化を進めることで、業務の効率が上がったり、書類の保管スペースの削減につながったりするというメリットがあります。
一方で、新たにソフトやシステムを導入するコストが必要になったり、社内ルールを見直したりといった手間がかかるというデメリットがあります。
まとめ
今回は電子帳簿保存法への対応について説明しました。
ポイントです。
・2024年1月1日から、請求書・領収書等の電子データを送付・受領した場合には、要件を満たした電子データでの保存(電子取引データ保存)が義務化されます。2023年のうちに用意しましょう。
・タイムスタンプを付与した電子データを保存するには、認定事業者による会計ソフト等を使う必要があるので注意が必要です。
デジタル化を推し進める上でのメリットやデメリットをきちんと確認した上で、自社に必要な制度を構築していきましょう。