一般社団法人が設けることのできる「基金制度」って何?どうやって運用するの?
一般社団法人の設立に向けて、準備をしている。
資金の調達にあたって、一般社団法人には「基金制度」があると聞いた。
どんな制度?どうやって運用するの?
そのような疑問に、一般社団法人の設立手続きをサポートする行政書士の私がお答えします。
一般社団法人の基金制度
一般社団法人の基金制度
一般社団法人は「基金制度」を設けることができます。
例えば、株式会社は「資本金」を、一般財団法人は「基本財産」を、法人設立時に用意します。
一方、一般社団法人は、このような財産の用意は設立要件となっていないため、「基金制度」を設けて、基本財産を確保し、財産的基礎の維持を図ることができるようになっています。
「基金」とは一般的に、経済活動の財産的基礎となる資金のことです。
基金制度を設けるか設けないかは一般社団法人の自由です。
基金制度を設ける場合は、定款で、「基金の拠出者の権利に関する規定」および「基金の返還の手続」を定めておく必要があります。
基金制度の運用方法
一般社団法人の基金制度の運用の仕方について、みてみましょう。
基金制度を設けることを定款に記載した後は、次のような手順で制度を運用します。
1)募集要項を作成し、募集の通知を行う
まず、以下のことを記した「募集要項」を作成します。
・募集する基金の総額
・金銭以外の財産を対象とするときは、その財産の内容および価額
・基金の支払いまたは給付の期日や期間
募集要項を作成したら、募集の通知を行います。
応募者は、氏名または名称、住所、拠出しようとする額を、一般社団法人側に伝えます。
2)応募者の中から基金拠出者を決め、拠出者へ連絡する
一般社団法人は、応募者の中から「基金の拠出者」および「その者に割り当てる基金の額」を決めます。
通知書(基金拠出割当通知書)や契約書で、基金の拠出者に決定事項を連絡します。
3)拠出者から振込を受ける
拠出者は、拠出の期限までに、基金の払込金額の全額を払い込みます。
4)基金を返還する
基金の返還をするには、定時社員総会の決議が必要です。
一般社団法人は、ある事業年度の貸借対照表上の純資産額が、基金の総額を超える場合に、その超過分の額を上限として、基金の返還をすることができます。
基金は原則として返還の義務があるのですが、上の条件に合致しなければ、基金の返還はできません。
なお、利息をつけて返還することはできません。
「法人の解散時まで返還しない」と定款等で定めることも可能です。
詳細は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(略称:一般法人法)をご確認ください。
基金と寄付金
上述の、一般社団法人の基金制度の説明を読んで、基金制度の運用は容易ではない印象をもたれたかもしれません。
基金ではなく、寄付金を集めることについても考えてみましょう。
非営利法人である一般社団法人の特徴や活動目的を上手にアピールすることで、寄付金を集められる可能性はあります。
それでは、一般社団法人において、基金と寄付金とは何が違うのでしょうか。
寄付金について
まず、寄付金について少しご説明します。
贈与や無償の供与として支出や移転がなされる金銭等のことを「寄付金」といいます。
(なお、官庁用語や法令用語では「寄附金」と表記されることが多いですが、「寄付金」と意味は一緒です。)
街頭での寄付金募集、寄付型のクラウドファンディング、遺贈寄付など、さまざまな形で行われています。
募集する側は、寄付金の目的や手段を決め、規程を作成するなどして、寄付金を募集します。
また、国や地方公共団体、公益社団法人や認定NPO法人等への寄付は、税額が控除される場合もあります。
一般社団法人の基金と寄付金の違い
一般社団法人の基金と寄付金の違いをまとめると、以下のようになります。
一般社団法人の 基金 | 寄付金 | |
一般法人法での定め | あり | なし |
意義 | 基本財産を確保し、財産的基礎の維持を図ること | 金銭等の贈与または無償の供与 |
返還義務 | 原則あり (利息なし) | なし |
定款への記載 | 実施するなら、記載は必須 | 記載は必須ではない ※寄付金品が財産の一つとすることを記すことも可能 |
基金のいろいろ
さて、一般社団法人の基金制度のほかにも、〇〇基金など、時々耳にすると思います。
蛇足になりますが、他の「基金」について、少し触れておきます。
団体名に「基金」とつけているところがあります。
例えば、独立行政法人国際交流基金、一般財団法人○○奨学基金など。
集めた資金を元手にして、目的とする活動を行う団体です。
国民年金や厚生年金保険といった公的年金に、企業が上乗せを行うものが「企業年金」です。
そして、単独または複数の企業で「企業年金基金」という法人(法人名「◇◇企業年金基金」等)を設立し、企業年金制度を運用しています。
自営業者などが加入する、「国民年金」の上乗せを目的とした基金は「国民年金基金」といいます。
また、地方公共団体が、国から交付された補助金等を、特定の目的のために、他の財産と区分して積み立てておく、「条例で定める基金」というものもあります。
これらは一例ですが、「基金」とは一般的に、経済活動の財産的基礎となる資金のことをいい、いろいろな基金があるのです。
まとめ
今回は、一般社団法人の基金制度について書きました。
ポイントです。
・一般社団法人には、基本財産を確保し、財産的基礎の維持を図ることを目的とした基金制度がある。
・一般社団法人は基金制度を設けても設けなくてもよいが、設ける場合は、定款に定めておく必要がある。
・一般社団法人の基金制度は、法律で定められた手順に従って運用する。
法人の運用資金の準備をどうするのか、しっかり計画を立て、専門家等から情報収集をして、法人運営するのがよいでしょう。