一般社団法人から公益社団法人へ!認定の要件や手続きは?

いま運営している一般社団法人を公益社団法人にしたい。

認定されるのは簡単ではないらしい。

どんな要件や手続きがあるのだろう。

そのような疑問に、法人設立サポートをおこなう行政書士の私がお答えします。

一般社団法人から公益社団法人へ

公益社団法人になってメリット享受しよう

公益社団法人になるには

「一般社団法人」であれば、「公益社団法人」への認定申請ができます。

「一般社団法人」は、以下の手順で、「公益社団法人」を目指します。

1.公益認定のための要件をクリアする
2.申請書類を用意する
3.主管庁に申請をする
4.審査をパスして認定される

「公益社団法人」として認められるための「公益認定基準」は沢山あり、また、該当してはいけない「欠格事由」にも気を付けなければなりません。

また、申請書類一式の準備や主管庁への相談にも時間と労力がかかり、一般法人から公益法人となるのは容易ではないといわれています。

申請後に行われる審査の結果、認定されないこともあります。

しかし、2020年11月現在、「公益社団法人」は約4,200団体存在しています。

「一般社団法人」約65,000団体に対しての比率は低いですが、きちんと準備をすれば、認定されると考えられます。


まずは、「一般社団法人」から「公益社団法人」になった場合のメリットについて、確認しておきましょう。

公益社団法人を設立するメリット

社会からの信頼度が高くなる

公益のために事業を行う団体として認定されるため、社会からの信頼度は高くなります。

人が集まりやすくなり、社会への影響力も高まると考えられます。


寄付が集まりやすい

公益社団法人に寄付した個人は、所得税・個人住民税・相続税・譲渡所得税において、控除を受けられる・非課税になるなどの税制優遇を受けられます。

寄付した法人にも、法人税の優遇措置があります。

こうして、寄付が集まりやすくなります。


このようなメリットを享受するために「公益社団法人」の設立を目指すことを決めたら、クリアすべき要件を確認しましょう。

公益社団法人になるための要件

公益認定基準を確認・クリアしよう

公益社団法人になるには、公益認定基準の18項目をクリアしなければなりません。(「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(認定法)第5条

現在の一般社団法人の体制がこれらの基準に適合していない場合は、基準に合わせて定款や体制を変更します。

それぞれの項目について、簡単に説明します。


1.公益目的事業を行うことを主たる目的としていること

不特定多数の者の利益の増進に寄与する事業(=公益目的事業)であるか、また、事業が広く公開されているかが主なポイントになります。


2.公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること

財政基盤を明確にすること、経理処理・財産管理およびその情報開示を適正におこなっていること、そのための専門的人材の確保などが必要です。


3.社員、理事、監事、使用人などに特別の利益を与えないこと

役員等に、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇がないかという点です。


4.特定の個人や団体へ、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないこと

投機的取引を行う事業への寄附等行為はできません。


5.公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある事業を行わないこと

投機的な取引や高利の融資等の事業で、公益法人の社会的信用を裏切るような事業はできません。


6.公益目的事業の収入が、適正な費用の額を超えないこと

収入が費用を上回る場合は、特定費用準備資金(将来の特定の活動の実施のために特別に支出する必要)への積立額として整理したりします。


7.収益事業を行う場合は、公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないようにすること

収益事業等への資源配分や事業内容に注意が必要です。


8.公益目的事業の比率が50%以上と見込まれること

収益事業等経費や運営費に必要な経常的経費が多くなりすぎてはいけません。


9.遊休財産額が認定法で定められた制限を超えないこと

事業のために使われておらず使われる見込みのない資金(=遊休財産)は、翌年度1年間分の公益目的事業費の額までしか認められません。


10. 各理事について、理事とその配偶者や三親等内の親族である理事の合計数が、理事の総数の3分の1を超えないこと

役員間で特別な関係がある者を役員にする際の制限です。監事についても、同様です。


11. 他の同一の団体の理事や使用人に就任している者の数が、当該法人の理事の総数の3分の1を超えないこと

「他の同一の団体」については、人格、組織、規則などから同一性が認められる団体ごとに判断されます。監事についても、同様です。


12. 会計監査人を置くこと(政令で定められた基準に合致する場合)

貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億以上であるなど(認定法施行令6条)の規模に該当する場合は、会計監査人を置かなければなりません。


13. 役員の報酬等は、不当に高額なものとならない基準とすること

民間事業者の役員の報酬等や従業員の給与、当該法人の経理の状況等の事情を考慮して決めなければなりません。


14. 社員の資格得喪や議決権に関して、不当な扱いをしないことなど

・社員の入退会について、不当に差別的な取扱いをする規定を設けない。

・社員の議決権について、不当に差別的な取扱いや優遇措置をとる規定を設けない。

・理事会を置く。


15. 他の団体の意思決定に関与できる株式等財産を保有していないこと

ある株式会社の議決権の過半数の株式を保有している場合は、保有する議決権数を半数未満としたり、無議決権株にしたりという方法をとります。


16~18. その他、定款に記しておくこと

・公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産があるときは、その維持及び処分の制限に関すること

・法人が消滅する場合、または清算をする場合の残余財産は、類似の事業を目的とする他の公益法人や国・地方公共団体などに贈与すること


以上の公益認定基準については、必要に応じて、定款に記載するなどして、当該法人の方針として、内外に示します。


また、こうした認定基準をクリアするだけでなく、欠格事由(認定法第6条)をなくす必要もあります。

そして、申請書類の準備をすすめます。

公益社団法人になるための申請書類

申請書類はたくさんあります

公益認定基準を確認し、欠格事由を排除しながら、公益社団法人申請のための書類一式の準備をします。

申請先である主管庁は、事業内容が一つの都道府県の中だけのものであればその都道府県となります。

複数の都道府県にまたがる事業活動を行う場合は内閣府が主管庁になります。


申請に必要な書類の一覧は、認定法第7条公益法人information内資料に記載があります。

代表的なものについて少し説明します。


申請書
名称や代表者の氏名、公益目的事業を行う都道府県の区域、事務所の所在地、公益目的事業の種類と内容、収益事業等の内容を記載します。

法人の財務に関する書類
公益目的事業比率や遊休財産額をチェックするための書類です。
公益法人会計基準についてはこちら(内閣府HP)をご参照ください。

定款
一般社団法人としての現在の定款が、公益認定基準などに合っていない場合は、定款を変更する手続きが必要です。

事業計画書収支予算書 など
予算の基礎を説明する書類も用意します。


用意する申請書類は、専門的な内容のものがたくさんあるので、主管庁や専門家に相談しながら、準備をするとよいでしょう。

まとめ

今回は、公益社団法人になるための要件や手続きについて簡単に説明しました。

ポイントは以下になります。

・公益社団法人のメリットは、社会的信頼度の高さや、寄付の税制優遇があること。

・公益認定基準を確認し、欠格事由を排除しながら、公益社団法人申請のための書類一式を準備して、主管庁に申請する。

・申請書類は専門的な内容のものがたくさんあるので、主管庁や専門家に相談しながら、準備をするとよい。


公益社団法人認定のための道のりは容易ではありませんが、不特定多数の国民や市民の利益のための公益目的事業はとても意義あるものです。

しっかりと準備をして、公益社団法人の認定を取得してください。

※内閣府のHP:公益法人information(インフォメーション)に重要な情報が掲載されています。