遺産分割協議書って何?どうやって作るの?どうして必要なの?

夫が亡くなった。遺言がなくて遺産を分けるときは、遺産分割協議書を作る必要があると知人から聞いた。

遺産分割協議書って何?どうやって作るの?何に使うの?

この記事を読むと、遺産分割協議書のことがわかります。
相続手続きのサポートができる行政書士の私が解説します。

遺産の分割

遺産分割協議を行います

亡くなられた方の遺産を、複数の相続人と分けるとき、遺言書が残されていれば遺言書に基づいて分けることができますが、遺言書がない場合は、遺産分割協議書を作成します。

遺言書に基づいて遺産を分ける

亡くなった方が遺言書を残していれば、遺言書で指定されたとおりに遺産を分けることができます。

亡くなられた方の意思を継いで遺産を分けるため、揉め事が少ない遺産の分け方です。

そのため、一般的には、亡くなる前の元気なうちにご家族のために遺言書を書くことがすすめられています。

遺産分割協議を行って遺産を分ける

遺言書がない場合は、相続人全員で協議をして遺産の分け方を決めます。

法定相続分とは異なる割合で遺産を分けたり(※)、遺言書の指示と異なる割合で遺産を分けたりする場合には、相続人全員で協議をして「遺産分割協議書」を作成し、協議の結果を文書で残しましょう。

※遺産は、法定相続分とは異なる分け方も認められています。

民法906条

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

遺産分割協議書がいらない場合

遺産分割協議書を作らなくてよい場合もあります。

遺言書がない場合でも、次の場合には、遺産分割協議書の作成は必要ありません。


・相続人がひとりしかいない

遺産を引き継ぐ人が明確であれば、協議をすることもないので、遺産分割協議書はもちろん必要ありません。

諸手続きには、亡くなった方との関係を証明するため、戸籍謄本等の書類の用意は必要です。


・不動産、有価証券、自動車等、名義変更が必要な財産がない場合

相続人が複数いて、上記の遺産の名義変更をするときは、基本的には遺産分割協議書が必要になります。

遺産が預金や貯金(以下「預貯金」という。)だけの場合は、遺産分割協議書がなくとも、戸籍謄本等を提出すれば払い戻しの手続きが可能な銀行が多いです。


・相続税の申告をしなくていい場合

相続税は、相続財産が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」より多い場合に、支払う税金です。

相続税の申告のときに、遺産分割協議書が必要です。

相続税については、こちらの記事をご参照いただけます。

それでは次に、遺産分割協議書の作り方や書き方について、ご説明します。

遺産分割協議書の作り方

遺産分割協議書の作り方を説明します

遺産分割協議書を作るための条件

相続人全員が遺産分割協議に参加すること

全員が同じ日に同じ場所に集まって協議をしてもいいですし、集まらなくても問題ありません。

集まれない場合は、メールや電話、手紙などで、相続財産の分け方を協議することで構いません。

相続人全員が協議の結果を承諾すること

協議の結果を同意した証として、全員が署名し、実印で捺印をします。

そして、各自で遺産分割協議書の原本を保管します。

遺産分割協議書に書くこと

遺産分割協議書には、主に次のことを書きます。

「亡くなった方(被相続人)の、氏名、生年月日、本籍、最後の住所、死亡年月日」

「誰が、どの財産を、どれくらい相続するか」

預貯金等は、銀行名、預貯金の種類、口座番号を記載します。

不動産は、登記簿の記載どおりに記載します。

なお、死亡保険金は、相続財産ではなく、受取人固有の財産とされますので、遺産分割協議書には記載しません。


正しい情報にもとづいた遺産分割協議書を作成するためには、相続人の調査や、相続財産の調査が必要です。

相続人や相続財産の調査をします

相続人の調査

まず、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本」を入手して、誰が相続人であるか調べ、相続関係説明図を作成します。

前の結婚時の子がいた、認知された非嫡出子がいた、養子がいたなど、知らなかった相続人の存在が見つかった場合には、遺産分割協議に加わってもらう必要があります。

また、認知症の方など、遺産分割協議のための意思能力に欠けると判断される方が相続人の中にいる場合は、成年後見人に協議に参加してもらうことになります。
認知症になった後に成年後見人をつける場合は、家庭裁判所に申し立てをします。

遺産分割協議書が完成した後で、新たな相続人が判明した場合は、遺産分割協議をやり直すことになります。

相続財産の調査

不動産については、納税通知書などを参考に、「固定資産税評価証明書」や「履歴事項全部証明書」等を入手して、どのような相続財産があるかを調べ、財産目録を作成します。

金融資産については、亡くなった方の家などで通帳やカード、信託銀行や証券会社からの案内などを参考にして調べます。

遺産分割協議書が完成した後で新たな財産が見つかる場合に備えて、遺産分割協議書に「ここに記載のない財産が見つかった場合、その財産についてはすべて甲が相続する」といった記載をしておくことも可能ですし、「別途協議する」としておくことも可能です。

遺産分割協議に関する注意点

注意して遺産分割協議書を作りましょう

次に、遺産分割協議書では解決しない場合などの注意点について説明します。

遺産に債務が含まれている場合

遺産の中に、住宅ローンや借金などの債務がある場合、遺産分割協議書の中で「債務は相続しません」と書いても、それは第三者である銀行等の債権者には対抗できません。

「甲だけが債務を相続します」と記載した場合は、そのことは、相続人の間だけで効力があることになります。


プラスの遺産よりもマイナスの遺産(債務)が大きい場合などで、その債務を一切相続したくない場合は、家庭裁判所に「相続の放棄」を申し立てます。

相続の開始を知ったときから3か月以内に手続きをしなければなりません。

「相続の放棄」は、第三者である銀行等の債権者に対抗できます。払う立場にないことを主張できます。

ただし、「相続の放棄」をすると、プラスの遺産も一切引き継げなくなりますし、死亡保険金の特別な非課税枠が使えなくなるなど、デメリットがあることには注意が必要です。

相続人の間で協議がまとまらなかった場合

遺産分割協議が相続人の間でまとまらなかった場合、遺産の分割は以下のように行います。


調停分割

家庭裁判所の調停により、分割方法を決めます。

裁判官と調停委員が間に入って話し合いをし、相続人全員の合意を目指します。


審判分割

調停でも合意できなかった場合は、家庭裁判所の審判により分割方法を決めます。

家庭裁判所の裁判官が審判により遺産の分割方法を決めます。

家庭裁判所での審判の結果に不服がある場合は、高等裁判所に不服申し立てをすることができます。

まとめ

今回は、遺産分割協議書について解説しました。

ポイントです。

・亡くなられた方が遺言書を残していない場合は、遺産分割協議書を作成して、遺産の分割を行う。

・相続人や相続財産の調査をしっかり行い、正しい情報にもとづいて遺産分割協議を行うこと。

・遺産分割協議書では解決しない場合もあるので注意する。

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要で、意見を一致させるのに苦労することもあります。

そのため、亡くなる前の元気なうちに遺言書を書くこと/(夫や親などに)書いてもらうことをおすすめします。

こちらの記事が参考になります。

遺言書の作成、遺産分割協議書の作成は、行政書士などの専門家に依頼することが可能です。