電気用品安全法にもとづいて輸入事業者が家電を輸入する前後に必要な準備や届出について(PSEマーク)

海外から家電を輸入して日本国内で販売する場合に考慮すべき法律の一つに「電気用品安全法(電安法)」があります。
電安法の対象となる家電を輸入販売する場合は、輸入事業者は一定の法的責任を負います。
このコラムでは、輸入事業者が家電を輸入する前後に必要な準備や届出の手順及びその注意点について、事業の運営をサポートする行政書士の目線で解説します。
電安法の適用範囲
電気用品安全法(電安法)は、電気用品による危険(感電、火災等)及び障害(電波障害等)の発生の防止を目的として、対象となる電気用品を指定して、製造・輸入、販売等を規制しています。
対象となる「電気用品」とは
電安法の適用を受けるか否かを判断するためには、まず、輸入する家電が電安法の対象となる「電気用品」の定義に該当するかを確認します。
一般家庭や商店などへの引込み口からコンセント間の配線器具、コンセントに繋ぐ電化製品の多くが対象となる電気用品に該当します。
そして電気用品は、特に危険度が高いとされる「特定電気用品」と、それ以外の「特定電気用品以外の電気用品」に大別されています。
「特定電気用品」には菱形のPSEマーク、「特定電気用品以外の電気用品」には丸形のPSEマークの表示が義務付けられています。
この区分によって、後述する検査義務の程度や方法が異なります。
輸入事業者の責任
電安法において輸入事業者は次のことについて、責任を負います。
1)設計等が技術基準に適合すること
2)製品の検査の実施、検査結果の記録・保存
海外メーカーが現地で安全基準を満たしていると主張していても、日本国内の技術基準への適合性を保証する最終的な責任は輸入事業者に帰属します。
万が一製品事故が発生した際の回収命令や罰則の対象となるのは日本の輸入事業者であるため、海外メーカー任せにせず、自らが主体となって安全性を担保する体制を構築しなければなりません。
なお、2025年12月の電安法改正により、特定輸入事業者が電安法の適用を受けることになりました。
特定輸入事業者とは、日本国内の輸入事業者を介さず、直接日本国内の一般消費者に電気用品を販売する海外事業者を指します。
特定輸入事業者は、一般の輸入事業者と手続きが異なる点がありますので注意が必要です。
輸入販売までのフロー

輸入販売する家電が電安法の対象となる電気用品である場合は、事業の届出、技術基準適合確認、適合性検査、自主検査、PSEマークの表示といった義務を果たした後に日本国内での販売が可能となります。
それぞれの手続きや方法について、簡単にご説明します。
電気用品名・型式の区分等の確認
電安法の対象となる電気用品については、電気用品安全法施行令 別表第一に記されています。
経済産業省サイト(電気用品安全法令・解釈・規定等)や電気用品安全法法令業務実施手引書(経済産業省サイトより)に説明があります。
型式の区分は非常に細かく分類されています。
電気用品に該当するか、どの型式区分であるかは、製品の構造や機能によって判断され、同じ見た目でも対象・非対象が分かれることがあります。
電気用品名及び型式区分を確認したら、事業の届出を準備します。
事業の届出
事業開始の日から30日以内に、所定の経済産業局へ「電気用品輸入事業届出書」を提出します。
遅くとも当該届出に係る電気用品を輸入した日(通関日)を事業開始の日といいます。
ただし、事業のための準備行為や、事業開始に係る社内等における意思決定日を事業開始日とすることも可能です。
届出書の提出先は、基本的には事務所等の最寄りの経済産業局です。
ただし、事務所や倉庫等が複数の経済産業局の管轄区域内に存在する場合は、経済産業省大臣官房産業保安・安全グループ製品安全課宛てになります。
この届出を怠ったり、虚偽の報告を行ったりした場合には罰則が適用されるため、注意が必要です。
なお、保安ネットによる電子手続きを推奨します。
郵便の費用や日数を考慮せずにオンラインで申請でき、届出の記録をいつでも確認することができます。
また、経産局による、紙の届出に受領印を記して返すサービスは2026年6月頃に終了する模様です。
基準適合の確認

輸入事業者はその輸入家電が所定の技術基準に適合していることを確認する義務(基準適合義務)を負います。
技術基準は、電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について(経産省サイト>技術基準省令解釈)が示されています。
電気用品についての日本固有の基準が別表第一~十一で規定されています。
実際の試験方法や整合規格(JIS/IEC番号)は別表第十二(整合規格)で示されています。
基準適合の確認は、輸入事業者自ら実施するか、又は、試験機関や海外メーカー等に依頼して履行します。
適合性検査の受検
電気用品のうち特に危険度が高いとされる「特定電気用品」を輸入する場合は、経済産業大臣の登録を受けた第三者機関(経産省サイト>登録検査機関)による適合性検査を受検し、交付された「適合同等証明書」の副本を保管しなければなりません。
上述した基準適合の確認も、適合性検査も、海外メーカーが既に同類の証明書を用意している場合がありますが、検査基準が日本の規定に合致しているとは限りませんので注意が必要です。
合致していない場合は、必要に応じて、事業者自らが検査を実施します。
販売前の自主検査
電安法では、販売前の製品の全数について、自主検査を行うことが義務づけられています。
※「特定電気用品以外の電気用品」は、一部抜き取り検査が認められています。
この検査は「外観」「絶縁耐力」「通電」「出力電圧」など、品目ごとに定められた方式で行わなければなりません。
検査自体は海外の製造工場に委託することも可能ですが、検査が適切に行われたことを示す「検査記録」は、検査日から3年間、輸入事業者が必ず保存する義務があります。
PSEマークの表示
上記全ての義務を履行したら、輸入家電にPSEマークを表示します。
表示には、所定のPSEマークに加え、届出事業者名(輸入事業者名)および登録検査機関名(特定電気用品の場合)、定格等を記載しなければなりません。
表示は容易に消えない方法で行う必要があり、シール貼付や刻印など、製品の性質に合わせた適切な手法を選択します。
まとめ
電気用品安全法は、消費者の生命・身体の安全を守るための極めて重要な法律です。
輸入事業者は、扱う製品が日本国内の安全基準を満たしていることを保証する義務があります。
適切な事業届出、基準適合性の確認、そして継続的な自主検査と記録の保存。
これら一連の手続きを正確に履行して初めて、PSEマークという「安全の証」を表示する義務を果たせます。
グローバル化が進む現代において、海外製品の活用は大きなビジネスチャンスですが、併せて法的責任を正しく理解し、専門家の知見を活用しながら、盤石なコンプライアンス体制を構築していくことが成功への鍵となります。
-1.png)
