東京進出で失敗しないために─地方に本社がある中小企業が押さえておくべきポイント

はじめに
東京に拠点を作ろうと考える地方企業は少なくありません。
人口やビジネスチャンスの集中する東京は、新規顧客や協業先の獲得、人材確保の面でも魅力的な街です。
東京の事業所を対象とする補助金に申請できるようになるというメリットもあります。
しかし、準備が不十分だと、余計なコストやリスクが生じ、東京進出が失敗に終わってしまうかもしれません。
この記事では、地方に本店を置く中小企業が東京に事業所を設置する際に気をつけたいポイントを解説します。
支店にするか支店以外(営業所や出張所)にするかの選択、登記や税金、労務管理など、注意すべき点は多岐にわたります。
事業所の形態ー支店か営業所か

東京に拠点を置く際、「支店」とするか、「営業所」「出張所」などの支店以外とするかで、法律上、実務上の扱いや注意点が異なります。
そもそも支店とは
支店は、通常「本店から離れた場所に設けられ、一定範囲の営業について独立性をもって活動できる人的・物的組織」と説明されますが、実は会社法に支店の定義はありません。
支店の登記をした事業所が、支店になります。
では、なぜ登記をするのか。
それは、支店として登記をすることで、次のようなメリットがあるからです。
- 会社の一部として法的に認められる拠点となり、契約や融資、許認可の場面で正式に扱われる。
- 第三者に対して所在地や存在を公示でき、取引先や行政機関が安心して取引・審査できるようになる。
登記義務について
支店の登記の際は支店1か所あたり6万円の登録免許税が課されます。
取締役会議事録の提出が必要です。
なお、2022(令和4)年の改正により、支店・従たる事務所の所在地での登記は不要となり、本店所在地のみで、設置から2週間以内に登記します。
支店以外(営業所や出張所など)は登記は不要で、支店に比べて簡便に設置できます。
支店か営業所か
次のような点で判断するとよいでしょう。
- 契約・融資・人材採用での信用力 → 支店
- 将来的に独立性の高い拠点にしたい → 支店を検討
- 登記コストや手続きの簡便さを優先 → 営業所等
東京進出時には、目的・規模・費用対効果を総合的に勘案し、どの事業所形態がふさわしいかを検討しましょう。
東京拠点の経費について

運営上の経費
東京拠点でのコストは、家賃・人件費・交通費・水道光熱費など、地方より高くなるのが一般的です。
予算と合わなければ、東京進出を取り止める判断も必要です。
赤字でも納付する法人住民税の均等割
法人が支払う主な税金に、法人税、法人事業税、法人住民税があります。
そのうちの法人住民税は、法人税割と均等割に分かれて算出されます。
法人税割は、法人の所得に応じて税額が決まるため、赤字の法人は原則として法人税割はゼロになります。
しかし、均等割額は、たとえ赤字であっても納付しなければいけない税金です。
そして、支店や営業所等を複数の自治体に設けると、それぞれの自治体で法人住民税の均等割が発生します(地方税法第72条の23)ので、負担を考慮しなければいけません。
なお、法人住民税は事業活動の実態がある事業所に課されるため、登記のない営業所だから税金はかからないというわけではありません。
補助金・助成金の活用

自治体ごとの補助金や助成金
東京進出にあたり、都内の中小企業向けの補助金や助成金制度の申請を検討できるようになります。
例えば「東京しごと財団」の助成金の申請対象は、「都内に本社又は主たる事業所(支店・営業所等)があること」と明記されています。
(参照:東京しごと財団 助成金申請フローについて,PDF)
例えば「東京都中小企業振興公社」は助成金の申請要件の一つを、都内に事業所を有する中小企業としています。
基本的には登記の有無を問うていませんので、営業所でも申請はできますが、東京都内の事業所で実質的に事業を行っていることの証明は求められます。
(参照:東京都中小企業振興公社 助成事業Q&A)
まとめ
東京進出はチャンスであると同時に、慎重な準備が求められる挑戦でもあります。
支店か支店以外(営業所や出張所)とするか、法的手続き、新たなコストへの対応、人材の確保まで多岐にわたるポイントを丁寧にクリアしていくことで、東京でのスムーズな事業展開が可能となります。
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