飲食店営業許可と風俗営業許可、どちらを取ったら開業できるの?
カラオケスナックを開業して、お客さんと一緒に歌ったり、楽しい時間を提供したりしたい。
開業するときは、役所の許可が必要?
どんな申請や届出をしたらいいの?
そのような疑問に、許認可の申請を代行する行政書士の私がお答えします。
接待を行う飲食店
飲食店営業許可
客にお酒やおつまみなどを提供するときは、衛生面に十分気を付ける必要があるため、飲食店営業許可が必要となります。
飲食店営業許可は、保健所に申請します。
許可を取るには、食品衛生の観点から、営業所ごとに食品衛生責任者を置かなければなりませんし、水質検査が必要になる場合もあります。(飲食店営業許可申請の記事はこちらです。)
そして、飲食の提供に「接待」行為が加わると、風俗営業許可も併せて取得しなければ開業できません。
接待とは
特定の客に飲食を提供する以上の会話やサービスを行うことは、接待とみなされ、風俗営業に分類されます。
つまり、カラオケスナックで、特定少数の客の近くに居て、歌うことを勧めたり、客の歌に手拍子や拍手をしたり、褒めはやすこと、客と一緒に歌うこと(歌唱など)は、接待に当たります。
その他、次の行為が接待に該当します。
談笑・お酌など
特定少数の客の近くに居て、一定の時間、談笑の相手をしたり、お酒等の飲食物を提供したりすること
ショーなど
特定少数の客に対して、その客の専用のスペースで、ショーや歌舞音曲等を見せ、又は聴かせること
ダンス
特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、ダンスをさせること
遊戯など
特定少数の客と一緒に、遊戯、ゲーム、競技等を行うこと
その他
客と身体を密着させたり、手を握るなど、客の身体に接触すること
接待に該当することを少しでも行うかもしれない場合は、風俗営業許可を申請します。
それでは次に、風俗営業について、少し詳しく見てみましょう。
風俗営業について
風俗営業とは
風俗営業の「風俗」とは、衣・食・住・行事など生活上のしきたりや風習を意味します。
風俗営業と性風俗営業(風俗産業)は別の種類ですが、どちらも、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)により規制されています。
この法律は、
・善良の風俗の保持
・清浄な風俗環境の保持
・少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止
を目的として、開業の許可の基準などを設けています。
風俗営業は、風営法で次のように分類されています。
風俗営業の分類
第1号営業(社交飲食店、料理店等)
キャバレー、待合、料理店、カフェ、その他設備を設けて、客の接待をして、客に遊興又は飲食をさせる営業
接待をするカラオケスナックはこちらの分類に該当します。
第2号営業(低照度飲食店)
喫茶店、バー、その他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの
第3号営業(区画席飲食店)
喫茶店、バー、その他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの
第4号営業(マージャン店、パチンコ店等)
マージャン店、パチンコ店、その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
第5号営業(ゲームセンター等)
スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗、その他これに類する区画された施設において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業
特定遊興飲食店営業
ナイトクラブ、その他設備を設けて客に遊興をさせ、客に酒類を提供し、午前0時以降も営業するもの
次に、風俗営業許可の基準について、見てみます。
許可を受けられる基準
風俗営業の許可を受けるには、場所、施設や設備、営業主に関する基準があり、それらをクリアしなければなりません。
場所的基準
お店の開業場所は、どこでも許されるのではなく、基準が設けられています。
たとえば、住居が多く集合している地域や、学校・病院その他の施設の周囲おおむね100メートルの区域内での開業が制限されたりします。
しかし、基準は、都道府県の条例で定められており、地域によって異なりますので、注意が必要です。
東京都の条例等はこちら(警視庁サイト)です。
施設や設備の基準(第1号営業)
店内の広さや明るさなどの基準が、営業の分類ごとに定められています。
第1号営業の基準は以下です。
1、床面積は、和風の客室は9.5平方メートル以上、その他は16.5平方メートル以上とすること。(客室が1室のみである場合はこれより小さい床面積でよい)
2、客室の内部がお店の外から容易に見えないこと。
3、客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと(1メートル以上の高さの衝立などは設けない)。
4、善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
5、客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。
6、営業所内の照度が5ルクス以下とならないようにすること(新聞が読めるくらい以上の明るさとすること)。
7、騒音又は振動の数値が都道府県の条例で定める数値以上にならないようにすること。
人的要件
次のことに該当する人は、風俗営業の営業主になれません。
・風俗営業の許可を取り消され、その取消しの日から5年がたっていない
・破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない
・懲役、禁錮、罰金などの刑に処せられてから5年がたっていない
など。人的要件は他にもあります。詳細は風営法4条をご確認ください。
これらの基準に合っていないと、風俗営業許可は下りません。
基準に合っているかの確認は、行政書士などの専門家に相談することが可能です。
まとめ
今回は、カラオケスナックの開業を例に、風俗営業許可申請について書きました。
ポイントです。
・接待を伴うカラオケスナックは、飲食店営業許可に加えて、風俗営業許可を取得する必要があります。
・風俗営業の許可を受けるには、場所、施設や設備、営業主に関する基準があり、それらをクリアしなければなりません。
風俗営業許可を取得するためには、法律や条例などに定められた、沢山の基準を確認する必要があります。
しっかり許可が下りるような準備をしましょう。