相続人の一人が海外に住んでいるときは、印鑑登録証明書はどうやって用意するの?

印鑑証明書は海外在住時はどうしたらいいか

相続人代表として、遺産分割協議書を作成しているが、相続人の中に、海外在住者がいる。

印鑑登録証明書は、日本に住んでいたときの市区町村役場から取り寄せてもらえばいいの?

海外に住んでいる人は、ハンコではなく、サイン?

そのような疑問に、相続手続きをサポートする行政書士の私がお答えします。

印鑑登録証明書

遺産分割協議書と印鑑登録証明書

被相続人が亡くなり、遺産を相続人で分けるとき、遺言がのこされていなければ、相続人全員で遺産分割協議を行います。

そして、遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書に記載して、相続人全員の実印を押し、相続人全員の印鑑証明書を添付します。

完成した遺産分割協議書は、不動産や銀行口座の名義を変更するときなどに必要になります。


印鑑登録証明書は、書類に押された実印が本人のものであることを証明するものです。

住民票のある市区町村の役場で、実印を登録してあれば、印鑑登録証明書を発行してもらえます。


しかし、海外に在住している人の事情は、国内に住民票がある人とは異なります。

海外在住者の印鑑登録証明書

(コロナ禍の今は様子が異なると思いますが)海外転勤や国際結婚といった理由で、海外で生活をする人が相続人の中にいるというケースは昔より増えていると思います。

海外に1年以上滞在していて(またはする予定で)、日本での住民登録が消されている人は、印鑑登録も消されているため、日本に住んでいたときの市区町村役場から印鑑登録証明書を発行してもらうといったことはできません。

この場合は、住んでいる国の居住地の領事館で、必要な手続きを行い、印鑑登録証明書の代わりになるものを入手します。

それが、署名証明書です。


ちなみに、海外での滞在期間が短い場合(海外旅行や、1年未満の海外出張など)は、住民票は日本の住所地においたままとなりますので、住所地の役場で印鑑登録証明書を入手することができます。

署名証明書

海外では署名証明などが必要になる

署名証明書(サイン証明書)とは

署名証明書とは、日本に住民登録がなく、海外に在留している日本人に、日本の印鑑証明に代わるものとして、日本大使館や日本領事館といった在外公館で発行される証明書です。

通称、サイン証明書といいます。

申請者は、領事の見ている前で署名を行わなければならないため、申請者本人が在外公館へ出向いて申請することが必要です。

(必要な場合は、拇印の証明もしてもらえます。)


必要書類等

日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効な日本国旅券等)が必要です。

※元日本人の方については、在外公館に相談し所要の書類を提出すると、証明書を発行してもらえる可能性があります。

手数料は、1通につき1,700円相当です。


署名証明書は、貼付型と単独型の2つの形式があります。

貼付型と単独型

形式1-貼付型

申請者本人は遺産分割協議書等の私文書を持参し、領事の見ている前でそれに署名します。

署名されたその私文書に、在外公館が発行する証明書(確かに本人が署名しました、という証明書)が合わせられ(貼付され)、割印がされ、署名証明書の完成です。


形式2-単独型

日本の印鑑登録と似た証明のやり方です。

申請者本人は、公館で用意された書類に、領事の見ている前で署名します。

そして、公館は署名証明書を作成します。


貼付型と単独型のどちらでもいい場合もあれば、貼付型でなければならない場合もあります。

相続財産に不動産が含まれている場合は、貼付型が必要となる場合が多いようですので、事前に法務局に確認をしましょう。


次に、在留証明についてご説明します。

遺産分割協議書には相続人の住所を記載しますが、署名証明書には申請者本人の住所が記載されていないことが多いため、併せて在留証明書を取得しておきます。

相続人本人が、どこに住所を有しているかの証明書です。

在留証明書

在留証明

在留証明書とは

在留証明書とは、日本に住民登録がなく、海外に在留している日本人に、日本大使館や日本領事館といった在外公館で発行される証明書で、現在の住所(生活の本拠地)又は当該国内での転居歴が記載されています。


必要書類等

日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効な日本国旅券等)

現住所が確認できる書類(現地の官公署が発行する滞在許可証や居住証明書等)

滞在開始時期が確認できる書類(滞在期間が3か月以上であること又はその予定であることを証明する書類)

戸籍謄本または抄本(遺産分割協議書に使うときは、証明書上の「本籍地」欄に都道府県名のみではなく、番地までの記載があった方がよいため)

手数料は、1通につき1,200円相当です。


詳細は、外務省サイト(在外公館における証明)をご参照ください。

在外公館では、署名証明書や在留証明書の他にも、様々な証明書が発行してもらえます。

まとめ

今回は、遺産分割協議書にからめて、海外在住者の印鑑登録証明書に代わる証明書について、書きました。

ポイントです。

・相続人の中に海外在住者(日本に住民登録がない)がいる場合は、その国の領事館や大使館で、署名証明書と在留証明書を発行してもらう必要があります。

・署名証明書と在留証明書は、いずれも、原則、申請者本人(相続人本人)が公館に行って手続きを行います。


相続人の中に海外在住者がいる場合は、相続人本人も、その他の相続人も、手続きが増えることになります。

被相続人があらかじめ遺言を用意しておき、誰に遺産を残すかを明確にしておけば、残された相続人たちが遺産分割協議書を作成する必要はなくなりますし、事前の心構えや対策が可能となります。