【建設業許可申請の基礎知識】建設業の許可は必要か、どのような要件があるのか
元請業者から、建設業許可を取っておいたほうがいいと言われた。
自社は取る必要があるのだろうか。
どのような要件があって、自社はその要件を充たしているのだろうか。
このような疑問に、許認可申請の代行をする行政書士の私がお答えします。
建設業許可
建設業許可がなくてもできる工事もあれば、許可がないとできない工事もあります。
その線引きはどこにあるでしょうか。
建設業許可がいらない軽微な工事
許可がいらないのは、建設業法で定められている「軽微な工事」のみを請け負う場合です。
「軽微な工事」とは、以下のような工事のことをいいます。
・建築一式工事以外で、1件の請負代金の額が500万円未満
・建築一式工事で、1件の請負代金の額が1,500万円未満
・延べ床面積が150㎡未満の木造住宅の建築一式工事
分割発注した場合は、その合計額でみます。
また、注文者が材料を提供する場合は、その材料の市場価格等を含めた額でみます。
上で述べた、軽微な工事に当てはまらない工事を請け負うときは、建設業許可が必要です。
建設業の業種、営業所など
業種、営業所の場所や数、一般建設業か特定建設業かによって、建設業許可の申請の仕方や要件が異なります。
建設業の29の業種
建設業は、29個の業種に分けられていてその業種ごとに、許可を受けます。
代表的な業種を3つご紹介します。
「軽微な工事」の説明にでてきた建築一式工事の業種名は「建築工事業」です。
「原則として元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整の下に建築物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事」のことをいいます。
一式工事にはもう一つ土木一式工事(業種名「土木工事業」)があります。
これは、「原則として元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整の下に土木工作物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事」のことをいいます。
なお、国土交通省の資料(令和2年3月末現在)によると、許可を取得している上位3業種は、「とび・土工工事業」171,511 業者(許可業者の 36.3%)、「建築工事業」150,676 業者(同 31.9%)、「土木工事業」130,854業者(同 27.7%)でした。
上位1位の業種である、とび・土工工事業とは、以下の工事をおこなう業種のことをいいます。
イ. 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事
ロ. くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
ハ. 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
ニ. コンクリートにより工作物を築造する工事
ホ. その他基礎的 又 は準備的工事
29業種すべての詳細は、国土交通省のこちらの資料を参照して、自社がどの業種に該当するかをご確認ください。
営業所の場所や数
営業所を置く場所や、いくつ設けるかによって、建設業許可の申請先が変わります。
一つの都道府県のみに営業所がある場合
・知事許可となるため、営業所の所在地を管轄する各都道府県へ申請します。
・申請から許可まで、約1~2か月かかります。
複数の都道府県に営業所がある場合
・国土交通大臣許可となるため、本店の所在地を管轄する地方整備局へ申請します。
・申請から許可まで、約3か月かかります。
なお、「営業所」とは、請負契約の締結に係る実体的な行為(来客を迎え入れ、見積・入札・契約等)を行う事務所を言います。
単なる登記上の本店や、事務作業のみを行う事務連絡所、工事作業員の詰める工事事務所や作業所等は、営業所には該当しません。
一般建設業と特定建設業
下請業者の保護のため、一定額以上の工事を下請けに出す際の契約金額について、制限が設けられています。
特定建設業に該当する元請となる場合は、特定建設業の許可を申請する必要があります。
一般建設業:建築一式工事以外 4,000万円未満
建築一式工事 6,000万円未満
特定建設業:これより多い金額で契約可能。
業種、営業所の場所や数、一般建設業か特定建設業かを決めたら、要件の確認をしましょう。
建設業許可の要件
建設業許可の要件の中でも特に重要な、経営業務管理体制、専任技術者、財産的基礎について、概略をご説明します。
(2020年10月1日に改正された建設業法にもとづく要件です)
経営業務管理体制
主たる営業所に「経営業務の管理責任者」を置くこと、または建設業に関する「経営体制」を備えなければいけません。
以下の1か2の要件を充たす、本店などの常勤役員等が必要です。
1.常勤役員等のうち、次のいずれかに該当する者がいること。
・役員として5年以上、建設業の経営業務の管理責任をした経験のある者。
・権限の委任を受けて5年以上、建設業の経営業務の管理責任をした経験のある者。
・経営管理業務責任者に準ずる地位で6年以上、建設業の経営業務の管理責任者を補助する業務をした経験のある者。
2.常勤役員等のうち、次のいずれかに該当する者がいること。
・建設業の役員等の経験が2年以上あり、かつ、財務管理・労務管理・業務運営に関する役員または役員直下の管理職の経験が3年以上ある者。
・建設業の役員等の経験が2年以上あり、かつ、建設業以外の役員等の経験が3年以上ある者。
なお、2の要件を充たすには、加えて、財務管理・労務管理・業務運営に関して、それぞれ1名以上(重複可)の補佐者が必要です。
専任技術者
全ての営業所に、要件に該当する専任の技術者を常勤として置く必要があります。
一般建設業と特定建設業で要件が異なります。
一般建設業 | 特定建設業 | |
実務経験 | 【指定学科を卒業した場合】 高校または専門学校卒業後 5年以上 大学または専門学校卒業後 3年以上 【学歴関係なく】 10年以上 | 一般建設業の要件に加え、2年以上の指導監督的な実務経験(※) |
国家資格 | 所定の資格 | 1級の国家資格等、所定の資格 |
※実務経験のみでは技術者要件を充たさない業種:指定建設業である、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園
財産的基礎
財産的基礎についても、一般建設業と特定建設業で要件が異なります。
一般建設業
1)自己資本が500万円以上あること
2)資金調達能力が500万円以上あること
特定建設業
1)欠損比率が資本金の20%以下であること
2)流動比率が75%以上であること
3)資本金が2,000万円以上あること
4)自己資本が4,000万円以上あること
なお、建設業許可のその他の要件には、誠実性、欠格要件、社会保険加入に関するものもあります。
建設業許可の要件を充たしていることを証明するために、書類の収集や作成をします。
要件を充たしていない場合は、充たすための条件について考えましょう。
不明な点は、許認可申請の代行をしている行政書士等に相談することが可能です。
まとめ
今回は、建設業許可の基礎知識として、許可をとる必要性、許可の要件について述べました。
ポイントは以下です。
・1件の請負代金の額が500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の工事を請負う場合は、建設業許可を取る必要があります。
・業種、営業所の場所や数、一般建設業か特定建設業かによって、申請の仕方や要件が異なります。
・経営業務管理体制、専任技術者、財産的基礎等の要件を充たしているか、充たすためにはどうしたらいいかを確認します。
建設業許可を取る際は、要件をしっかり確認して、たくさんある申請書類の準備に取り掛かりましょう。