元気なうちに遺言書を用意して、家族の負担を減らしましょう
自分の死後のことを考えて、「残された家族は遺産のことでもめないだろうか」、「自分の残した物の処分に困らないだろうか」と不安になりませんか。
この記事では、元気なうちに遺言書を用意して家族の負担を減らす方法が分かります。
遺言書作成のお手伝いや遺言執行者になれる行政書士の資格をもつ私がご説明します。
遺言書を用意すると家族の負担が減るの?
遺言書を遺さない場合
もし、あなたが遺言書を遺さずに亡くなった場合、残された家族は、①相続財産をくまなく調べ、②あなたの戸籍謄本から法定相続人を探し、③相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しなければなりません。
遺産分割協議書は、相続する不動産の登記や名義変更、銀行預金の払い戻しの手続きなどで必要になってくる書類です。
遺産分割協議がまとまらない場合も出てくるかもしれません。
その場合は、相続税の申告と納税の期限(死後10カ月以内)などに注意が必要となってきます。
遺言書を遺した場合
一方、あなたが遺言書を遺しておけば、残された家族は、遺言書に基づいて財産を分割することができます。
もめごとになるかもしれない、また作成に面倒な、遺産分割協議書を作成する必要がなくなります。
遺言書は、残された家族の負担を減らします。
遺言書はどうやって作るの?
遺言書とは
「遺言書」は、あなたの意思を、法律上のルールに基づいた内容・形式で書面に遺すものです。
ルールに基づいて書かれていないものは、「遺書」にすぎず、法的効力をもたないものとなります。
ちなみに、「エンディングノート」や「録音ビデオやテープ」で遺したものにも、法的な効力はありません。
遺言書には何を書くか
遺言書には、相続に関すること、遺産処分に関すること、身分に関することを書きます。
何を誰に相続するか、相続人以外で遺産を渡したい人のこと、認知に関することなどです。
また、「遺言執行者」を指定しておくことができます。
遺言執行者を指定しておくことで、自分の思いどおりに遺言書の内容を実現・執行してもらえるようになります。
行政書士などの専門家を遺言執行者とするのもよいでしょう。
そして、法的効力はありませんが、「付言事項」として、家族に対する自分の想いやこれまでの感謝を伝えたり、このように書いた理由も文書に記すことができます。
なお、遺言書にはいくつかの作り方があります。
自筆証書遺言
あなたが自筆で作成し捺印する遺言書です。
2019年より、法務局による自筆証書遺言保管制度が始まりました。
この制度を利用する場合は、遺言書に添付する相続財産の目録は、パソコンで作成できることになりました(全てのページに自身のサインと捺印は必要です)。
自分で作成するためにほとんど費用がかからないというメリットがある一方、遺言書に作成年月日がなかったり、必要な場所に捺印がないといった理由等で無効になるデメリットがあります。
公正証書遺言
2名以上の証人の立会いのもと、あなたが公証人に遺言内容を口頭で伝え、公証人が遺言書にするもので、あなたと証人が、署名・捺印します。
証人は、行政書士などの専門家に依頼することもできます。
公正証書遺言の作成費用は、法律で決まっています。
たとえば、遺産の額が1,000万円を超え3,000万円以下であれば、23,000円です。(日本公証人連合会HPより, 3-Q7)
公証人が文章を作成してくれるので、遺言書が無効になることはありません。
※「秘密証書遺言」というものもありますが、現在はあまり使われていませんので、ここでは省略します。
死後、遺言書の確認と相続の手続きは?
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言は、相続手続に入る前に、偽造や改ざんを防ぐための「検認」という作業が必要です。
保管されていた遺言書を、家庭裁判所で、相続人またはその代理人の立ち合いの下、開封し、遺言書の存在とその内容を確認します。
相続の手続きを行う上では、この「検認」によって発行される証明書が必要となります。
しかし、「検認」には1カ月以上かかることもあり、その分、相続の手続きの開始が遅くなります。
注)2020年7月からの自筆証書遺言保管制度では検認は不要になりました。
公正証書遺言の場合
一方、公正証書遺言は、原本が公証人役場に保管されるので、破棄・隠匿・改ざんされるおそれがないため「検認」が不要です。
そのため、速やかに、預貯金を引き出す手続きや、不動産の名義変更等の手続きに入ることができます。
まとめ
この記事では、以下のことをお伝えしました。
・遺言書を作成しておくと、遺産分割協議書の作成といった面倒な手続をしなくてよくなります。
・遺言書で、遺言執行者の指定をしたり、付言事項を書くことができます。
・公正証書遺言を作成すれば、公証人があなたの意思を文書化してくれます。「検認」も不要です。
誰もがいつ亡くなるか分かりません。残された家族の負担をできるだけ減らすよう、思い立ったときに、遺言書を作成しておきましょう。
なお、2020年7月10日より開始予定の、法務局での自筆証書遺言保管制度を利用すると、検認が不要になり、さらに遺言書の形式が法的に無効でないかの確認がされます。
しかし、遺言書の作成に関する相談には応じてくれませんし、適切な遺言の内容かの確認はされません。
よって、遺言書の作成や内容については、行政書士などの専門家に一度ご相談されてはいかがでしょうか。