「特定活動」ビザをもらうと、卒業後も日本で就職活動を続けられるってホント?
大学で事務をしていて、外国人留学生から、卒業後の就職先が決まらないと相談を受けた。
「特定活動」ビザをとれば、日本に残って就職活動を続けられるの?
そもそも「特定活動」ビザって何?
そのような疑問に、ビザの申請サポートができる行政書士の私がお答えします。
卒業前にビザを変更すること
ビザを変更する必要性
外国人留学生は、大学や大学院での在学中は、「留学」の在留資格(ビザ)で日本で勉強や研究をしています。
在留資格(ビザ)は、日本でどのような活動をするかによって、種類が変わります。
そのため、大学や大学院での勉強が終わり、日本で就職するなどして新しい活動をする前には、在留資格(ビザ)を変更する必要があります。
出入国管理局(入管。にゅうかん。)に在留資格(ビザ)の変更の申請をします。
就労ビザへの変更
外国人留学生が卒業後に取得する就労ビザの種類は、「技術・人文知識・国際業務」が全体の93.2%と最も多く、次いで「経営・管理」2.2%、「教授」2.1%と続きます。(2018年のデータ)
就職先の仕事内容は多い順に、「翻訳・通訳」23.6%、「販売・営業」13.4%、「海外業務」9.0%、「技術開発(情報処理分野)」6.5%でした。
就労ビザの種類 | 許可される仕事 | |
1 | 技術・人文知識・国際業務 | (技術)機械工学の技術者 (人文知識)企画、営業、経理などの事務職 (国際)英会話学校などの語学教師、通訳・翻訳、デザイナー |
2 | 経営・管理 | 企業等の経営者・管理者 |
3 | 教授 | 大学教授等 |
就職先から内定をもらったら、入社して働く前に、就労ビザを取得します。
入社予定の企業などと一緒に、ビザの変更申請のための書類を準備します。
一方、「卒業までに内定がもらえそうにない場合」や「内定はもらったが、すぐに入社しない場合」は、「特定活動」ビザへの変更申請が可能です。
卒業から入社するまでのビザ
卒業までに内定がもらえそうにない場合
外国人の大学生や大学院生で、在学中から就職活動を行っているけれども、卒業までに内定がもらえそうにない方もいると思います。
特にいまはコロナの影響で、企業の求人倍率も下がっています。
有効求人倍率は、2019年8月で1.59倍だったのが、2020年8月には1.04倍にまで下がりました。
卒業後も日本で就職活動を続けたい留学生は、「特定活動」ビザ(就職活動用)への変更の申請ができます。
申請書類(申請書以外)
・在籍している大学が発行する「継続就職活動についての推薦状」
大学と早めに相談してください。
・「継続して就職活動を行っていることを証明する資料」
ハローワークの登録カードや、会社説明会の参加証、採用選考の結果通知書などです。
認定期間
6カ月です。更新が1回できて、合計1年までです。
新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、更新の回数を増やすことが認められています。
入管にご確認ください。
アルバイト
申請して資格外活動許可をもらえば、週28時間まで働くことができます。
内定はもらったが、すぐに入社しない場合
外国人留学生は、秋に卒業する人もいると思います。
しかし、日本の企業は、4月からの入社を想定しているところもあるため、秋に卒業をした留学生は、卒業から入社まで約6カ月も間が空いてしまう場合があります。
この期間(※)も日本で生活をしたい場合は、「留学」ビザから「特定活動」ビザ(内定待機)への変更申請ができます。
※秋に卒業する人以外でも、卒業から入社まで期間が空く人は申請できます。
入社の時期が、内定後1年以内で、卒業後1年6月以内でなければいけないという条件があります。
また、申請に必要な書類がたくさんあります。
入社予定の企業と早めに相談してください。
申請書類(申請書以外)
・入社のために申請する就労ビザの申請書類
「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更する予定であれば、その書類を用意します。
・入社予定の企業が発行する資料
採用内定の事実と内定日を確認できる資料
連絡義務等の遵守が記載された誓約書
採用までに行う研修等の内容を確認できる資料(該当する活動がある場合)
認定期間
6カ月ごとです。更新が2回できて、長くて合計1年6カ月までです。
新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、更新の回数を増やすことが認められています。
入管にご確認ください。
アルバイト
申請して資格外活動許可をもらえば、週28時間まで働くことができます。
それでは、そもそも、「特定活動」ビザとは何でしょうか。
「特定活動」ビザについて
「特定活動」ビザの種類
外国人が「特定活動」ビザを取得して日本でできる活動は、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」です。
その活動は、家事使用人、アマチュアスポーツ選手、ワーキングホリデー、インターンシップ、就職活動などと幅広く、種類は40を超えています。
そして、政府の政策によって、その種類を増やし続けています。
少し例を挙げて簡単に説明します。
「特定活動」(告示46号)
留学生が就職できる仕事の幅を広げるために、2019年5月から、特定活動の種類が一つ増えました。
日本の大学や大学院を卒業した、日本語能力の高い(日本語能力試験N1など取得の)留学生が、広い知識と応用的能力等を活用して、より幅広い分野で日本で仕事ができるようになりました。
※告示46号と呼ぶのは、関係法令の46個目の活動であるためです。(条文はこちら)
「特定活動」(卒業後起業活動)
外国人起業家を増やそうと、先日、2020年11月20日にも、新たに「特定活動」ビザが新設されました。
留学生が大学や大学院を卒業した後も、日本での起業の準備ができるようにしました。
要件
・在籍している大学が、文部科学省の「留学生就職促進プログラム」か「スーパーグローバル大学創生支援事業」に入っていること
・留学生が、「外国人起業活動促進事業」「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を利用していること
このように、「特定活動」ビザは、政府の政策によって、その種類を増やし続けています。
まとめ
今回は、大学や大学院を卒業した後から就職するまでの期間に許可される「特定活動」ビザのことを中心に、説明しました。
ポイントをまとめます。
・在留資格(ビザ)は、日本での活動内容によって種類が異なるので、活動内容が変わる場合は、その前にビザの変更申請をする。
・卒業後も就職活動を続けたい場合や、内定から入社まで期間が空く場合は、「特定活動」ビザを申請できる。
・「特定活動」ビザは、40種類以上あるが、いまもその種類を増やし続けている。
「特定活動」ビザは種類がたくさんあります。
そして、就労ビザは他にも「技術・人文知識・国際」「経営・管理」「高度専門職」・・・とたくさんあり、それぞれの違いや、結局どのビザを申請したらいいのか難しい面があります。
留学生本人も、留学生をサポートするスタッフの方々も、ビザに関して分からないことがある時は、行政書士などの専門家に聞くなどして、ビザの変更の準備をするのがいいでしょう。