高度人材ポイント制って、高度専門職ビザのための制度なの?

会社で外国人スタッフの受入れを担当している。

ビザの高度人材ポイント制や高度専門職ビザのことを聞かれたけど、うまく説明できない。

そのようなお悩みはありませんか?

この記事を読むと、高度人材ポイント制と高度専門職ビザのことがわかります。

ビザの申請サポートをおこなう行政書士の私がわかりやすく解説します。

高度人材ポイント制について

高度人材ポイント制について説明します

高度外国人材

いま、外国人の労働力は、日本にとって不可欠なものとなっています。

そこで日本政府は、外国人の中でも、特に高度な知識や技能をもつ人材であり、「高度人材ポイント」が70点以上ある外国人を「高度外国人材」と認定することとしました(2012年5月~)。


ちなみに、2012年から2019年の間に、「高度外国人材」と認定された外国人は、合計で約21,000人でした。

国・地域別の内訳は、中国(65.5%)、インド(4.9%)、アメリカ(4.1%)、韓国(3.9%)、台湾(3.3%)となっています。

日本政府は、2022年末までに40,000人の「高度外国人材」の認定を目指しています。

高度人材ポイント制

外国人の「学歴」「職歴」「年収」「年齢」等について評価をして「高度人材ポイント」として計算するのが、「高度人材ポイント制」です。

「高度専門職ビザ」を申請するには、「高度人材ポイント」が70点以上必要です。

ポイント計算表(法務省HP)をみながら、以下の手順で、申請を予定する外国人のポイントの計算をします。


1.どの分野で活動する予定かを確認

「高度外国人材」はその活動の内容によって、3つに分類されています。

・高度学術研究活動
・高度専門・技術活動
・高度経営・管理活動

日本で予定する活動にもとづいて、ひとつ選びます。(それぞれの詳細はこちら


2.点数を計算し、合計点を出す

上記1で選んだ分野の列で、「学歴」○点、「職歴」○点、「年収」(賞与含む)○点・・・といったように、点数を出して合計します。


3.要件の70点以上があるかを確認

ボーナスポイント(特別加算)も加えているでしょうか。

たとえば、世界ランキング300位以内の大学を卒業または修了した場合は、ボーナスポイントとして10点が加算されます。

(詳細は、法務省HPを参照してください)


注意点

・ポイントを証明するための書類をすべて用意する必要があります。

・将来、永住ビザを取りたいと考えているのであれば、80点以上を目指すとよいでしょう。80点以上を1年以上キープすると要件が緩和されます


次は、高度人材外国人の方たちのビザについて、ご説明します。

高度専門職ビザ

高度専門職1号2号の説明

高度外国人材の制度ができた当初(2012年5月~)は、高度外国人材の方たちは、「特定活動ビザ」を取得して、家事使用人を帯同できるなどの優遇措置の対象でした。

その後、高度外国人材の方たちが、日本でより生活しやすく、働きやすくなるようなビザである「高度専門職」ビザが設けられました(2015年4月~)。


「高度専門職」ビザは、「高度専門職1号」と「高度専門職2号」に分かれており、1号を取ったあとに2号が取れるようになります。

1号は、さらに「高度専門職1号(イ)」「高度専門職1号(ロ)」「高度専門職1号(ハ)」に分かれています。

認定要件と併せて、それぞれの活動要件について、次で説明します。

高度専門職1号

認定要件

(来日前の場合)
・高度の専門的な能力を有する人材であること
・我が国の学術研究又は経済の発展への貢献が見込まれるもの
・ポイント計算の結果が70点以上であること

(日本に滞在している場合)
・行おうとする活動が「高度外国人材」としての活動であること
・日本での在留状況が良好であること
・ポイント計算の結果が70点以上であること


活動の内容によって、「高度専門職1号(イ)」「高度専門職1号(ロ)」「高度専門職1号(ハ)」に分かれます。

活動要件

「高度専門職1号(イ)」(高度学術研究活動)

・日本の公共や民間の機関との契約にもとづいて活動をすること。

・研究、研究の指導、教育をおこなう活動であること。

(例)研究者、科学者、大学教授など。

「教授」「研究」「教育」のビザの活動に近いものです。


「高度専門職1号(ロ)」(高度専門・技術活動)

・日本の公共や民間の機関との契約にもとづいて活動をすること。

・自然科学や人文科学の知識や技術を使う業務や、関連する事業の経営を併せて行うこと。

・年収300万円以上であること。

(例)医師、弁護士、システムエンジニアなど。

主に「技術・人文知識・国際業務(※)」「企業内転勤」のビザの活動に近いものです。

※国際業務は、高度専門職1号(ロ)の対象から除かれますのでご注意ください。


「高度専門職1号(ハ)」(高度経営・管理活動)

・日本の公共や民間の機関で活動すること。

・事業の経営や管理をする活動であること。

・年収300万円以上であること。

(例)経営者、管理者等の上級幹部など。

「経営・管理」ビザの活動に近いものです。

高度専門職2号

「高度専門職1号」や「特定活動」(高度外国人材)を取ったあと、3年以上日本に在留すると、申請ができるようになります。

その他の認定要件は、法務省HPのこちらの資料をご参照ください。


次に、高度専門職ビザのメリットとデメリットについて、説明します。

高度専門職ビザのメリットとデメリット

高度専門職ビザのメリットとデメリット

高度専門職1号のメリット

複合的な在留活動の許容

他の就労ビザでは、1つの在留資格の中で許可された活動しかできません。

しかし、高度専門職1号は、複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができます。


在留期間「5年」の付与

他の就労ビザ(「経営・管理」ビザなど)では、在留期間が1年ずつしか許可されないこともあります。

しかし、「高度専門職1号」は認定された全員が5年の在留期間をもらうことができます。

在留期間の更新は可能です。


永住許可要件の緩和

永住ビザをもらうには、「原則として引き続き10年以上日本に在留していることが必要」という要件があります。

しかし、高度外国人材としての活動を引き続き3年間、または1年間(ポイントが80点以上ある場合)おこなっていれば、在留要件はクリアします。


配偶者の就労

高度外国人材の配偶者は、学歴・職歴などの要件を満たさなくても、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などのビザで許可される就労活動ができます。


親の帯同

一定の条件(世帯年収が800万円以上など)をみたせば、子供や妊娠中の配偶者の面倒を見るため等を理由に、本人または配偶者の親の入国・在留が認められます。


家事使用人の帯同

一定の要件(世帯年収が1,000万円以上など)をみたせば、外国人の家事使用人を帯同することが認められます。


入国・在留手続の優先処理

入国事前審査に係る申請は受理から約10日以内、
在留審査に係る申請は受理から約5日以内で処理されます。

高度専門職2号のメリット

広く就労活動ができる

高度専門職1号の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができます。


在留期間が無期限

高度専門職1号の在留期間は5年のため、更新が必要でしたが、2号では更新手続きが不要になります。


高度専門職1号と同じ優遇措置

永住許可要件の緩和、配偶者の就労、親の帯同、家事使用人の帯同については、1号と同じように優遇されます。


高度専門職のメリット(優遇措置)の詳細はこちら(出入国在留管理庁)。


続けて、高度専門職ビザのデメリットをみてみましょう。

高度専門職ビザのデメリット

高度専門職1号のデメリット

転職しにくい

高度専門職1号は、転職したらビザを申請し直さなければなりません。

ビザの許可がされるときに、どの企業で働くかを含めて確認されるビザのためです。

このことは、「技術・人文知識・国際業務」などのビザが、許可された活動内での転職であればビザを申請し直さなくていい点と異なります。

なお、活動の内容がたとえば「高度専門職1号(イ)」から「高度専門職1号(ロ)」に変わるときも、ビザの変更申請が必要になります。

ちなみに、高度専門職2号は、転職してもビザを申請し直す必要はありません。

高度専門職2号のデメリット

就労活動をしつづけなければならない

日本で許可された活動を6カ月しない期間があると、許可が取り消されます。

永住ビザではこのような活動上の取り消し理由はありません。

高度専門職2号と永住ビザの違いです。


高度専門職ビザを含め、いろいろなビザのメリット・デメリットを確認し、日本で活動する外国人に合ったビザを選択する必要があります。

まとめ

今回は、高度人材ポイント制、高度専門職ビザについて解説しました。

要点は以下です。

・「高度人材ポイント制」とは、特に高度な知識や技能をもつ「高度外国人材」を認定するため、外国人の「学歴」「職歴」「年収」「年齢」等について評価をしてポイント計算をする制度のこと。

・高度外国人材の方は、活動に応じて分かれている「高度専門職1号」の(イ)(ロ)(ハ)や、「高度専門職1号」で3年以上日本で活動した後に申請できる「高度専門職2号」といったビザに申請ができる。

・高度専門職ビザを含め、いろいろなビザのメリット・デメリットを確認し、日本での活動に沿ったビザを選択すること。


たくさんのビザの要件や許可される活動内容を比較しながら、申請するビザをどれにするかを決める作業は簡単ではありません。

必要に応じて、行政書士などの専門家に相談するとよいでしょう。