外為法に基づいて日本銀行へ提出する、事前届出・事後報告って何のこと?
外国の企業から投資を受けることになった。
外為法に関係する手続きが必要な場合があると聞いた。
どのような手続きが必要だろう?
そのような疑問に、法人運営サポートを行う行政書士の私がお答えします。
外為法と外国からの投資について
外為法と対内直接投資
外国為替及び外国貿易法(略称:外為法、がいためほう)は、日本と外国との間の、資金や財・サービスの移動(対外取引)に適用される法律です。
日本政府は外為法及びその関係省令に基づいて、対外取引の管理や調整を行い、国際社会の平和及び安全の維持や、日本経済の健全な発展を目指しています。
そして、外国の投資家や外国企業から投資を受けた日本企業に対して、一定の場合に、事前届出又は事後報告を求めています。
目的は、健全な投資の促進と併せて、国の安全等に係る技術などが流出することなどを防ぐことです。
外国から投資を受けることになった日本企業は、その投資が、外為法で定められた「外国投資家」による投資か、「対内直接投資」に該当する投資か、投資を受ける日本企業の事業が「指定業種」に該当するか、どの国からの投資か、といったことを確認します。
そして、日本銀行への手続きが必要か、必要な場合は事前届出なのか事後報告なのかを確認します。
事前届出に該当する場合は、取引予定日の前6か月以内に日本銀行への手続きが必要となるので、早めの確認と準備が必要になります。
まず、この事前届出や事後報告の理解に必要な用語の定義・意味からご説明します。
外国投資家
主に、次に該当する個人や法人からの投資が、日本銀行への手続きの対象になります。
○日本に居住していない個人
○外国法令に基づいて設立された法人や団体
掲載国
外国投資家の国籍または所在国や所在地域が、「対内直接投資等に関する命令」(直投命令)の別表1に掲載されている国を掲載国といいます。(掲載国一覧、日本銀行サイト)
世界の多くの国が掲載国ですが、掲載されていない国(※)からの投資は、事前届出の対象になります。
※経済制裁措置の対象国などが該当します。
指定業種
関係告示の別表第一及び別表第二に含まれる業種を、指定業種といいます。
投資を受ける日本企業の事業が、指定業種に含まれているか否かの確認をします。
指定業種を事業にしている場合は、事前届出の対象になります。
なお、別表第一の業種は、武器や航空機、宇宙開発、原子力関連の製造業、並びに、これらの業種に係る修理業、ソフトウェア業などです。
別表第二の業種は、警備業、農林水産業、皮革製品製造業、航空運輸業、海運業などです。
財務省のサイトで確認できます。
対内直接投資
事前届出又は事後報告の対象となる、外国投資家による取引や行為は、対内直接投資として定められています。
対象となる主な取引を記します。
○日本の上場会社の株式または議決権の取得で、出資比率または議決権比率が1%以上となるもの。
○日本の非上場企業の株式または持分を取得すること。
○外国投資家(議決権比率3分の1以上)が、事業目的の変更、自身や関係者が取締役もしくは監査役に就任すること、事業譲渡等の議案に同意すること。
などです。
詳細は、日本銀行の外為法Q&A をご確認ください。
次に、事前届出と事後報告について、少し詳しくご説明します。
事前届出と事後報告
事前届出の対象
次のいずれかに該当する場合は、事前届出の対象となり、取引または行為を予定している日の前6か月以内に日本銀行へ届出書を提出する必要があります。
1)外国投資家の国籍または所在国・地域が、日本および掲載国以外のもの。
2)投資を受ける日本企業が営む事業に、指定業種が含まれている。
3)イラン関係者により行われる、各種行為(安保理の事前承認が必要な投資業種を営む会社の株式又は持分の取得など)。
届出書を日本銀行が受理してから30 日が経つまでは、届け出た取引や行為を行うことはできません(禁止期間)。
また、事前届出を行った後は、取引完了から45日以内に実行報告書を提出することも必要です。
届出の書式は日本銀行のこちらのサイトから入手できます。
対内直接投資の内容によって、書式が異なります。
事後報告の対象
次のすべてに該当し、外国投資家の出資比率または議決権比率が10%以上となった場合は、事後報告の対象となり、取引または行為を行った日から45日以内に日本銀行への手続きが必要です。
1)外国投資家の国籍および所在国・地域が、日本または掲載国であるもの。
2)投資を受ける日本企業が営む事業に、指定業種が含まれていない。
3)イラン関係者により行われる、各種行為(安保理の事前承認が必要な投資業種を営む会社の株式又は持分の取得など)以外のもの。
報告書の書式は日本銀行のこちらのサイトから入手できます。
対内直接投資の内容によって、書式が異なります。
さらに、1回の取引額が3千万円相当額を超える場合には「支払又は支払の受領に関する報告書」など、追加で提出する必要があります。
日本銀行への手続きについて
事前届出または事後報告を行うのは、外国投資家です。
しかし、外国投資家が非居住者の場合は、居住者である代理人が行います。
代理人の他に担当者を設定して、(行政書士等の)担当者に手続きを依頼することも可能です。
書類の提出は、日本銀行の窓口や郵送でも可能ですが、日本銀行外為法手続きオンラインシステムを利用すると、郵送等のコストが削減できたり、入力内容のチェック機能を使えたりできますし、期限が長くなる手続きもあるようです。
なお、オンラインシステムを利用する場合は、システムから書式を入手します。用紙で提出する場合の書式と異なりますので注意が必要です。
まとめ
今回は、外為法に基づいて日本銀行へ提出する、事前届出・事後報告について書きました。
ポイントです。
・外国の投資家や外国企業から投資を受けた日本企業は、一定の場合に、日本銀行へ、事前届出又は事後報告を行う必要があります。
・事前届出は取引予定日の前6か月以内に、事後報告は取引から45日以内に、日本銀行へ手続きをする必要があります。
・事前届出または事後報告を行うのは外国投資家ですが、居住者である代理人が行うことが可能で、代理人以外に担当者を設けることが可能です。
外国から投資を受けるにあたり、何か手続きが必要なのか、必要な場合はどのような手続きをいつまでに行えばよいのか、なかなか判断が難しい部分があります。
また、届出も報告も提出期限がありますので、早めの準備を心掛けましょう。
(この記事は、主に日本銀行の外為法Q&A を参照しました。)