リビング・ウィル~平穏な最期を迎えたいときの意思表示と準備

延命治療をするかしないか

もしも、ご高齢のあなたが、治らない病気になって、最期を迎えるときの延命措置。

その時は、こうしてほしい、これはしないでほしいという希望はありますか。

あるなら、それを文書に残しましょう。

この記事では、「リビング・ウィル」や「尊厳死宣言書」について、説明します。

リビング・ウィル

リビング・ウィルとは

治らない病気にかかり、死期が迫ったときに、延命治療をやりすぎない、安らかな最期を希望する。

その希望する内容を周囲に伝えておくことを「リビング・ウィル」(Living Will)といいます。

直訳すると、Living(生前のことに関する)Will(意思)です。


心肺停止などになったときは、人工呼吸器や胃ろうといった延命措置が施されるのが一般的です。

しかし、厚生労働省が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(2018年)によると、一般の方の終末期の医療に関する回答は以下のようでした。

・呼吸ができにくくなった場合、気管に管を入れて人工呼吸器につなげることは希望しない:65.2%

胃ろう(口から十分な栄養をとれなくなった場合、手術で胃に穴を開けて直接管を取り付け、流動食を入れること)は希望しない:71.2%


自分の最期をどのようにしたいか、一度考えてみてはいかがでしょうか。

延命措置をやりすぎない、穏やかな最期を迎えることを希望するなら、家族や医療スタッフ等との協力が必要になりますですので、事前に周囲と相談することが重要です。

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ACP(人生会議)

あなたが最期を迎えるときに希望する医療やケアについて、事前に、家族や医療スタッフ等と繰り返し話し合うことをACP(アドバンス・ケア・プランニング, Advance Care Planning)といいます。

人生会議」という呼び名で、厚生労働省がすすめているものです。

あなたの希望とご家族の考えが違う場合もでてくるかもしれません。

ご家族との対話を繰り返して、最終的にどうするかを決めましょう。

また、医療の制度や法的に、できること・できないことがありますので、医師、看護師、介護スタッフ等と話し合うことも必要です。

話し合いを経て、結論が出たら、それを文書に残しておくとよいでしょう。

文書に残しておくことは、あなたが最期を迎える時に、家族や医療スタッフ等の助けになります。

リビング・ウィルの表し方

文書に残しましょう

リビング・ウィルの文書は、「尊厳死宣言書」「リビング・ウィル」「事前指示書」などいろいろな呼び方がされています。

尊厳死宣言書

治らない病気にかかり、死期が迫ったときに、延命治療をやりすぎない、安らかな最期を迎えることを、一般的に「尊厳死」といいます。

つまり、リビング・ウィルは、尊厳死を希望する意思のことです。

医師から処方された死を招くための薬を服用するなどして最期を迎える「安楽死」とは異なります。

(※尊厳死と安楽死の定義は諸説あります)


尊厳死の希望を表明する「尊厳死宣言書」は、公正証書として作成することができます。

公証人と相談しながら作成し(宣言書のサンプルはこちら)、公証役場に保管されます。

公正証書にすることで、自分の意思を公的に証明でき、医療機関などに提示したときに意思を尊重してもらいやすくなります。

2018年には、全国で約1,900件の尊厳死宣言公正証書が作成されています。

遺言書と併せて尊厳死宣言書を公正証書で作成する人が多いのだそうです。

(遺言書は亡くなったあとのことを記すものなので、生前の延命措置については書いても効力をもちません。)


公正証書遺言の作成については、こちら記事が参考になります。

日本尊厳死協会

日本尊厳死協会は、リビング・ウィルを文書で残しておくことを推奨している団体です。

協会に加入し、会費を支払い、協会が作成した書式で「リビング・ウイル(終末期医療における事前指示書)」を作成します。

人生の最終段階(終末期)を迎えたときの医療の選択について事前に意思表示しておく文書として、協会が管理をします。

2020年の会員数は10万人を超えているそうです。

医療機関や自治体の取り組み

医療機関や介護施設が独自のリビング・ウィルの書式を作って、本人に意思を確認しているケースもあります。

また、一例としてご紹介しますと、東京消防庁は、本人の希望・ACP(人生会議)・かかりつけ医への確認など、一定の条件を充たせば、たとえ救急車を呼んだ場合でも心肺蘇生を中断できる制度を、2019年12月から始めています。

自宅での看取りを希望していても、ご家族等が救急車を呼んだ場合には、心肺蘇生措置などの延命治療が施されます。

そして回復しない場合には、ご本人の希望とは異なり、病院での看取りとなってしまう可能性が高くなります。

それを防ぐための制度です。

まとめ

livingwillまとめ

今回は、リビング・ウィルについて記事にしました。

ポイントは以下です。

・治らない病気にかかり、死期が迫ったときに、延命治療をやりすぎない、安らかな最期を希望する場合、その意思を周囲に伝えることを「リビング・ウィル」といいます。

・あなたが最期を迎えるときに希望する医療やケアについて、事前に、家族や医療スタッフ等と話し合うACP(アドバンス・ケア・プランニング)を繰り返し行うことが重要です。

・公正証書にする、民間団体や病院の書式を使って作成するなど、あなたのリビング・ウィルを文書に残しましょう。


最期まであらゆる延命措置をしてほしい方も沢山いらっしゃると思います。

リビング・ウィルは、誰にも強制されるものではありません。

自分の最期をどうしたいか、一度考えてみてはいかがでしょうか。