エンディングノートは書いているんだけど、遺言書も作っておいたほうがいいの?

エンディングノートと遺言書

友人のすすめで、エンディングノートを書いている。

エンディングノートを書いた後、さらに遺言書を作る人もいれば、作らないと言う人もいる。

自分は、遺言書も作っておいたほうがいいのだろうか?

そんな疑問に、遺言書の作成をサポートする行政書士の私がお答えします。

エンディングノート

結論を先にいいますと、遺言書と違って、エンディングノートには法的効力がありません。

よって、エンディングノートを作成したら、それをもとに遺言書の作成へと進むことをおすすめします。

法的効力のある遺言書を書く必要があったのに、書けずに亡くなってしまい、残されたご家族が苦労されたケースを見ています。


それでは、エンディングノートは、何のために作るのでしょうか。


エンディングノートとは

ご自分の高齢を意識したとき、今後のいろいろなことに思いを巡らすと思います。

からだのこと、家のこと、お金のこと、家族のこと、お墓のことなど。

その思いをすべて、文字で残しておき、いざというときにご家族らに参考にしてもらうために書くものです。


法的効力がないので、あなたのエンディングノートを読んだご家族らは、あなたの書いた通りにおこなう義務はありません。

しかし、ご家族らがあなたの意志や考えを知りたいと思ったときに、あなたに聞けない場合は、書き記されたものがあるかないかでは大きな違いです。


ちなみに、「エンディングノート」は、決まった呼び方ではありません。

「終活ノート」「遺言ノート」など、いろいろな名前で、配布や販売がされています。

家にある余ったノートで手作りのエンディングノートを作ることもよいでしょう。


エンディングノートに書くこと

エンディングノートには、「今のこと」「将来のこと」「財産のこと」などを書きます。


今のこと

氏名や生年月日といった基本情報

病気のこと(治療中のもの、罹ったことのあるもの、心配な点)


将来のこと

もしも認知症になったらどうしたいか

延命治療をすることについてどう考えているか

お葬式やお墓についてどうしたいか


財産のこと

預貯金、土地、建物、自動車、株式、高価な美術品などの情報

何がどこにあるか。

亡くなった後、誰に譲りたいか。



最後の「財産のこと」が、あなたが亡くなった後に、残されたご家族らがもめないよう、遺言書に記しておくべき内容です。

しっかり遺言書をのこしておこうとするあなたにとって、エンディングノートの「財産のこと」の部分は、「遺言書の下書きのために作成するもの」になります。


「分けるほどの財産なんてない…」と思われる方もいると思います。

しかし、今住んでいる家はどうしますか?

貯金はゼロですか?


遺言書の役割についてご説明します。

遺言書を作成しましょう

遺言書を準備すること

遺言書の効力

遺言書には、自分の財産の何を誰に相続するか、相続人以外で遺産を渡したい人がいるか、認知に関することなど(あれば)を書きます。


法定相続分をご存じでしょうか。

たとえば、配偶者には2分の1、子どもたちにも2分の1という、民法で定められた遺産の分け方です。

しかし、遺言書に記した遺産の分け方は、法定相続分より優先されるものとなります。

あなたと同居している息子に法定より多く遺産を残すことや、慈善団体に寄付するなどが可能です。


また、相続手続では、遺言書そのものを銀行などの手続きで使うことができるため、ご家族らが別途「遺産分割協議書」を作成する手間を省くことにもなります。


特に遺言書を残しておいたほうがいいケース

特に遺言書を残しておいたほうがいいケースについて、ご説明します。

あなたが当てはまるものがあれば、迷わず遺言書をご用意ください。


相続人が多い

遺言書がない場合、あなたが亡くなった後、相続人は全員で遺産分割協議を行わなければなりません。

相続人全員の合意があって初めて遺産分割協議がととのい、遺産分割協議書が作成できます。

相続人の数が多ければ、当然、全員の同意を取るのにとても苦労します。

遺産の分け方で意見が割れる可能性も上がるでしょう。

遺言書があれば、遺産分割協議書を作成しなくてもよくなります。


相続人の中に判断能力が欠けた方や行方不明者がいる

遺言書がない場合に相続人全員で行う遺産分割協議ですが、

相続人の中に、認知症などで判断能力が欠けた方がいる場合、後見人の選定から始める必要が出てきます。

また、相続人の中に、行方不明者がいる場合は、探すところから始めます。

どちらも、膨大な時間がかかります。

遺言書内で相続人を指定しておくと、これらのことを避けることができます。

相続税の納付期限は、亡くなった時から10か月以内なので、遺産分割協議にあまり時間をかけるのは危険です。


相続人間で対立がある

あなたの財産の分け方のことで、あなたと違う意見をお持ちのご家族がいたり、お子さんたちの間での意見の相違などがあったりはしませんでしょうか。

あなたがご自分の希望を叶えたいのであれば、遺言書に自分の希望の遺産分けを書いておく必要があります。

たとえば、残された配偶者に引き続き無償で家に住んでもらいたい、配偶者居住権を行使できる、と思っていても、遺言書がなく、相続人の間で反対意見が上がれば、配偶者居住権は使えません。

遺産を渡したい

相続人以外に財産を遺したい

法定の相続どおりではなく、自分の身の回りの世話を親身にしてくれた息子のお嫁さんや、親しい友人に遺産を渡したい。

そういうときは、遺言書です。

相続人ではない相手に財産を残すので、遺贈として、遺言書に記します。


子どものいない夫婦

夫婦二人の家族で、お子さんがいない場合で、夫婦のどちらか一方が亡くなったとき。

遺言書がなければ、遺産は配偶者に4分の3、きょうだい(亡くなっていればその子)に4分の1に分けるのが法定相続です。(親も亡くなっている場合の分け方。)

残される配偶者に全ての遺産を渡したいのであれば、遺言書にそのように書いておく必要があります。


ひとりっ子で婚姻していない、両親兄弟姉妹もいない場合

相続人がいない場合は、遺言書がなければ遺産は国庫に入ることになります。

遺産を渡したい人がいる、慈善団体等の非営利法人などへの寄附したいといった希望があれば、遺言書を書いておかなければいけません。


いかがでしょうか。あなたの状況にあてはまるものがあれば、遺言書を作成されることをおすすめします。

ただし、さあ、遺言書を書こう、となっても、遺言書に書いても効力のないものがあるのでご注意ください。

次でご説明します。

遺言書に書いても効力のないもの

法的効果のないもの


遺言書に書くことで法的効力が生まれる可能な事項(「法定遺言事項」)は、民法等の法律に定められています。

それ以外の内容を遺言書に書いても、それは法的効力を生じません。


生前のこと

エンディングノートに書いた「認知症になったら」「延命治療はどうするか」といった内容は、遺言書に書いても法的効力は生まれません。

法定遺言事項ではありませんし、そもそも遺言書の効力はあなたが亡くなった後に生まれるものです。


それでは、あなたの望みを叶えるにはどうしたらいいでしょうか。

たとえば、認知症になった後の ”財産の管理” や “介護の手続き” などをあらかじめ指定した人に頼みたい場合は、元気なうちに、指定した人と「任意後見契約」を結びます。

また、延命治療は望まないのであれば、元気なうちに、「尊厳死宣言書」を公正証書で作成しておきます。


葬儀やお墓のこと

葬儀やお墓のことも、遺言書に書いても法的効力が生まれない事項です。

遺言書の「付言事項」(法的効力はないが、遺族へのメッセージを遺せるもの)に記しておき、遺族の判断の参考にしてもらうことはできます。


そのため、あなたが「必ず実現してほしい葬儀やお墓のことなどがある場合」は、元気なうちに、その実現を依頼したい人と「死後事務委任契約」を結びます。


「任意後見契約」「尊厳死宣言書」「死後事務委任契約」などの契約書は、とても重要な内容ですので、行政書士などの専門家にご相談されるのがよいでしょう。

各種契約書に関してはこちらのブログが参考になります。

まとめ

今回は、エンディングノートを作った後には遺言書を作成したほうがいいことについて、書きました。

ポイントです。

・元気なときのあなたの意志や考えをご家族らに知らせるためには、エンディングノートのような、文字に残されたものが重要です。

・しかし、エンディングノートには法的効力がないので、エンディングノートをもとに遺言書の作成へと進みましょう。

・遺言書に書いても実現できない望みは、元気なときに、「任意後見契約」「尊厳死宣言書」「死後事務委任契約」などの契約書を作成して、あなたの望みを叶えるという方法があります。


ご自分の今後のこと、財産の行方、残されるご家族のこと。

元気なうちに、希望していることを文字に残されるのがよいと思います。

法的効力のあるもの、遺言書や契約書で残されるのがベストです。