経営管理ビザをとって、日本で会社経営をするには、どんな準備をすればいいの?
日本で会社経営をしたい外国人の方。
経営管理ビザを取ろうと思っているけど、どんな準備をすればいいの?
この記事を読むと、経営管理ビザのこと、経営管理ビザを取るための準備が分かります。
ビザの申請サポートができる行政書士の私が解説します。
経営管理ビザとは
経営管理ビザでできる活動
経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」、英語でBusiness Manager Visa)は、2015年4月に「投資・経営ビザ」(Investor/Business Manager)から変更されました。
このビザを取ると、会社を経営したり、事業を管理したりする活動ができるようになります。
経営する活動
1)自分で会社をつくって経営すること
2)他の人(日本人や外国人)が作った会社の経営に参加することや、その会社を引き継いで経営すること
社長・取締役など、会社の事業を運営するときの決定権をもつ活動が該当します。
管理する活動
工場長・支店長など、社内組織の管理的業務に従事する活動が該当します。
「事業の経営または管理について3年以上の経験があること(大学院での専攻も可)」と「日本人が働いた場合と同じ額以上の報酬を受けること」という要件が必要です。
経営管理ビザで認められる在留期間など
ビザが許可された場合、在留期間は、5年、3年、1年、4か月、3か月のいずれかになります。
会社を新しく作って経営管理ビザを申請する場合は、1年の認定期間しか認められないケースが多いようです。
1年の在留期間が認められたら、約1年後にビザの更新が許可されるように、会社経営や納税をしっかりやります。
ちなみに、経営管理ビザで日本で活動をしている外国人の数は、2017年に24,033人、2018年に25,670人、2019年に27,249人でした。
毎年約2,000人ずつ増えています。
(2020年版入管白書、「在留の資格別在留外国人数の推移」より)
次に、経営管理ビザを他のビザと比較して、その特徴をみてみましょう。
経営管理ビザの要件の特徴
経営管理ビザは滞在歴要件がない
永住ビザ(永住権)は、日本での活動内容に制限がないため、永住ビザを取得してから、会社経営を目指すことも一つの方法です。
しかし、永住ビザは、原則として、日本に10年以上住み、そのうちの5年以上を就労ビザで働いていなければならないという要件があります。
一方、経営管理ビザには、日本滞在歴の要件はありません。
さらに帰化(国籍を日本に変える)という方法もありますが、永住ビザと帰化の違いについては、次の記事を参考にしてください。
経営管理ビザは学歴要件がない
「高度専門職1号(ハ)」ビザも、日本で会社の経営や管理をすることができるビザです。
取得すれば、在留期間は5年もらえますし、条件を満たせば親を日本に連れてくることもできるようになります。
しかし、要件である高度人材ポイントを70点、80点と取得するためには、通常は学歴要件をクリアしていないと難しいです。
一方、経営管理ビザには、学歴要件はありません。
高度専門職ビザの概要についてはこちらを参考にしてください。
経営管理ビザは、日本滞在歴が長くなく、高度人材ポイントを持っていない人でも申請できるビザといえます。
しかし、永住ビザや高度専門職ビザより要件が簡単ということは決してありません。
次に、経営管理ビザを取得するまでの流れについて、要件と一緒に、説明します。
経営管理ビザを取得するまでの流れ
新たに会社を設立して、経営管理ビザを取得するには、まずは会社の設立から始めます。
株式会社を作る場合は、以下のブログが参考になります。(LLCなど、株式会社以外の形態の会社の設立でもビザは申請できます)
会社の基本事項を決める
設立する会社について、経営管理ビザを申請するための要件にそって基本事項を決めて、必要な内容を「定款」(ていかん。会社の憲法のような大事な規則書)に記載します。
事業所とは、会社の事務所やお店のことです。
賃貸の場合は、事業用に借りているという賃貸借契約書が必要です。
自宅の一部を事業所に使用する場合は、事業専用のスペースが確保されている必要があります。
また、会社名を表札やポストに表示して、存在をオープンにしておくことも求められます。
バーチャルオフィスは認められません。
会社の目的・事業
日本で適法に行われる業務であればよく、業種に制限はありません。
ただし、飲食店やリサイクルショップなど、許認可が必要な業種の場合は、定款に記載する内容などの注意事項について関係官庁へ確認をします。
重要なのは、事業の安定性と継続性です。
ビザを申請するときに提出する事業計画書等で、それを証明できるように書類を準備します。
事業の規模
以下の1)~3)のいずれかに該当するように準備します。
1)経営者や管理者以外に2名以上の常勤職員がいること
常勤職員とは、派遣や請負ではない、正社員のことをいいます。
常勤職員は日本人でも外国人でも可能です。
外国人である場合は、ビザの種類が「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」でなければいけません。
2)出資金(資本金)は500万円以上とすること
3)上の1)か2)に準ずる規模であること
「準ずる規模」については、入管HP、Q29 が参考になります。
以上のような、経営管理ビザを申請するための基本事項を決め、さらに定款に記載しなければいけない事項を決めて、定款を作成します。
定款は、公証役場で認証される必要があります。
認証されたら、次の手続きを行います。
定款認証後の手続き
出資金を日本の金融機関に振り込む
外国人が日本で銀行口座を開設するには、在留カードが必要です。
「短期滞在ビザ」や観光で入国した時に、銀行口座の開設はできません。
よって、日本に住んでいない方が日本での会社経営を目指している場合は、日本に住んでいる方(共同経営予定者、常勤職員予定者など)の口座を振り込み先にするなどの協力が必要になります。
これは、会社の事業所を日本国内に確保するときにも言えることです。
なお、次に行う「登記申請」で、出資金を振り込んだ証明書が必要になります。
法務局へ会社の登記申請をする
登記をしたら、ビザの申請に必要な、登記事項証明書の写しを入手します。
官公署へ会社開設を知らせる
税務署、都道府県税事務所:納税のために必要な手続きです。
社会保険事務所:社会保険の加入に関する手続きです。
労働基準監督署・公共職業安定所:労働保険への加入に関する手続きです。
納税義務や、従業員への労働環境の整備などの公的義務を果たしているかが、ビザの更新のときにしっかり確認されますので、注意が必要です。
ビザの申請書類の準備
上で説明してきたように、日本で会社経営をする場合は、まずは、会社をつくるところから始めます。
しかし、日本での会社経営を効率よく始めるために、ビザ申請のための書類の準備も同時に進めることをお勧めします。
経営管理ビザの申請書類は、入管のHP(カテゴリー1~4)で確認できます。
例えば、新会社を設立し、在留資格認定証を取得したい場合は、カテゴリー4になります。
会社を設立したのに、経営管理ビザの許可が下りなかったケースもあります。
ビザが許可されるかは、入管の審査の結果が出るまで、わかりません。
そのリスクを忘れずに、慎重に準備をしてください。
まとめ
今回は、経営管理ビザについて解説しました。
ポイントを、以下に記します。
・経営管理ビザは、日本滞在歴が短く、高度人材ポイントを持っていない場合にも申請できるビザといえますが、要件が簡単なわけではありません。
・経営管理ビザが許可されるためには、しっかりと事業計画を立て、事業の安定性と継続性を明確にすることが重要です。
・経営管理ビザを取得するためには、まずは日本での会社設立から始めますが、会社を設立したのに経営管理ビザを取得できない可能性もあります。そのリスクを忘れずに、慎重に準備をすることが大事です。
会社の設立、経営管理ビザの申請、どちらも簡単なものではありません。
他のビザをとる選択肢も捨てないで、よく考えて、分からない点があれば、行政書士などのビザや法人設立の専門家に相談しながら準備するのがよいでしょう。