外国人留学生を雇用する場合の注意点や必要な手続きについて知りたい
日本の文化や生活を知っている外国人留学生にうちの会社で働いてもらいたい。
どんなことに注意したらいいだろう?
どんな手続きが必要なのだろう?
そのような事業者の方の疑問に、大学で外国人留学生の業務に携わっていた私がお答えします。
外国人留学生のいま
外国人留学生っていまどれくらいいるの?
どの国の人が多いの?
日本学生支援機構の資料にもとづいてご紹介します。
(留学ビザで日本で勉強をしている方たちを外国人留学生として説明します)
外国人留学生の数や出身地など
外国人留学生の数
外国人留学生の数は、2019年に約31万2千人になりました。
2008年に文部科学省が「2020年までに留学生数を30万人にする計画(留学生30万人計画)」を出した時は約12万4千人でした。
政府の政策目標どおり、10年で2.5倍にまで増えました。
外国人留学生の出身国・地域
2019年の上位5位は、① 中国124,436人(39.9%)、② ベトナム73,389人(23.5%)、③ ネパール26,308人(8.4%)、④ 韓国18,338人(5.9%)、⑤ 台湾9,584人(3.1%)となっています。
留学生30万人計画を出した年の上位5位は、① 中国72,766人(58.8%)、② 韓国18,862人(15.2%)、③ 台湾5,082人(4.1%)、④ ベトナム2,873人(2.3%)、⑤ マレーシア2,271人(1.8%)でした。
外国人留学生の日本での所属先
大学が一番多く89,602人(28.7%)、次いで日本語教育機関83,811人(26.8%)、そして専修学校(専門学校)78,844人(25.3%)、大学院53,089人(17.0%)となっています。
外国人留学生の日本への就職率
2018年度中に卒業(修了)した外国人留学生の進路状況調査(日本学生支援機構)によると、卒業生の35.1%(20,402人)が日本国内に就職しています。
日本国内への就職率が高い順では、短期大学卒で55.8%(338人)、大学卒で41%(4,741人)となっています。
就職先を従業員数別でみると(2018年のデータ、法務省資料)、従業員数100人未満の企業等への就職が46.8%(12,148人)と最も多くなっています。
従業員数1,000人以上の企業等への就職者は18.7%(4,850人)です。
アルバイトとして雇用するとき
外国人留学生をアルバイトとして雇用する際の注意点について、ビザのことを中心に説明します。
「留学」ビザ
外国人留学生がもつ「留学」ビザは、日本で勉強するためのものなので、許可証がないとアルバイトはできません。
よって、事業者の方は、外国人留学生が「資格外活動許可証」をもっているかを確認してください。
在留カードの裏面(※)やパスポート上の資格外活動許可証印等で資格外活動許可の有無、許可の期限、許可されている活動の内容がわかります。
※在留カードの表面に「就労不可」と書いてあっても、裏面の下に「資格外活動:許可 原則週〇時間…」という記載があれば、アルバイトは可能です。
資格外活動の許可をもらっていなければ、出入国在留管理局(旧 入国管理局のこと)への申請が必要です。
本人以外には、企業の担当者、行政書士等の申請取次者なども申請できます。
「資格外活動許可証」があれば、週28時間までは働くことができます。
大学等の長期休暇の時は、1日8時間まで働くことができます。
この労働時間の制限は、留学生一人あたりの時間ですので、2か所以上でアルバイトをする場合は、労働時間を合算して、上限時間を超えないようにする注意が必要です。
許可された時間を超えて外国人が日本で働くことは、「不法就労」にあたります。
そして「不法就労」をさせた事業者は、3年以下の懲役や3百万円以下の罰金となっていますので、外国人留学生の勤務状況の管理は重要です。
「特定活動」ビザ
大学等を卒業した後、就職活動を継続するための日本滞在を許可された外国人留学生は「特定活動」ビザをもっています。
「留学」ビザと同じように、週28時間までアルバイトができます。
しかし、「長期休暇の時は1日8時間まで可能」というルールは適用されないので注意が必要です。
「留学」ビザと同じように、「資格外活動許可証」がないとアルバイトできません。
事業者の方は確認してください。
社員として雇用するとき
「技術・人文知識・国際業務」ビザ
外国人留学生が日本の大学等を卒業したあと、働くことを目的に日本に滞在する場合は、就労ビザを取得しなければなりません。
就労ビザには、「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「特定技能」などがあります。
卒業後に日本で就職することを決めた外国人留学生の約9割が「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザに変更して、日本で就職しています(2018年のデータ)。
そのため、ここでは、「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更申請について説明します。
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学の卒業がひとつの要件になっています。
大学等で専攻していた、技術・人文知識・国際業務に関係する仕事に就く場合に許可されるビザです。
たとえば、経理、財務、総務、人事、法務、企画、商品開発、デザイン、マーケティング、広報、宣伝、通訳、翻訳、語学指導、生産技術、研究開発、エンジニア、プログラマー、建築設計、システム管理等が主な職種です。
一番多いのは、翻訳・通訳業(全体の約1/4)となっています。
ビザの変更は、出入国管理局への申請から許可までに1~3か月かかるので早めの準備が重要です。
4月からの就職を希望する場合、前年の12月から申請を受け付けている出入国管理局もあります。
申請は、本人以外には、企業の担当者、行政書士等の申請取次者なども可能です。
雇用する側が用意する書類は、雇用契約書、会社の概要に関する書類、法定調書合計表などです。
「特定技能」ビザ
「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、単純労働に就くことはできません。
よって、たとえば飲食店のホールなどでアルバイトとして働いていた外国人留学生に、社員登用後もアルバイトの時と同じ仕事に就いてもらう場合は、単純労働に該当するので、「特定技能」ビザになります。
「特定技能」ビザについては、下の記事をご参照ください。
外国人を雇用するときの届出等
外国人雇用状況の届出
事業者は、新たに外国人を雇用したときと、雇用した外国人が辞めるときは、「外国人雇用状況の届出」をハローワークで行わなければなりません(ハローワークの窓口かHPから)。
アルバイトも対象です。
届出を怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性がありますので注意してください。
届出のときの注意事項やQ&Aは厚生労働省のHPを参照してください。
外国人を受け入れるために
事業者の方は、日本人、外国人問わず、新入社員の受け入れの準備をされると思います。
外国人の新入社員に対しては、日本人の新入社員とは異なる視点での用意が必要になります。
外国人留学生は、日本での生活経験があるとはいえ、日本という外国での暮らしを続けていくのです。
すでに働いている日本人社員の意識を変える必要もあるかもしれません。
とはいえ、日本人もそれぞれ性格が違いますし、外国人も一人ひとり違います。
日本人も外国人も、思いやり合い、刺激し合って、共に働くことが大事ではないでしょうか。
まとめ
今回は、外国人留学生を雇用する際の注意点について説明しました。
ポイントは以下のとおりです。
・日本の大学等を卒業した外国人留学生の約35%(大卒では約41%)が卒業後に日本国内で就職をしている。
・アルバイトとして雇用するときは、「資格外活動許可証」の有無の確認と労働時間の管理が重要。
・社員として雇用するときは、ビザの変更申請が必要。
・外国人を雇用したら、ハローワークへの届が必要。
ビザの種類や申請手続きなど、複雑で分かりにくい点については、専門家に相談することができます。
企業側の受入れ体制を整えて、優秀な人材、一緒に働きたい人材は、国籍問わず採用する時代になってきたように思います。