社会福祉事業を始めたい。社会福祉法人を設立したらいいの?

老人ホーム、障害者支援施設、保育所など、社会福祉事業をおこそうと思っているが、社会福祉法人を設立したらいいのか、会社の設立でいいのか分からない。

そのような疑問にお応えします。

法人設立手続きサポートをする行政書士の私が説明します。

社会福祉事業について

社会福祉事業について

社会福祉事業の経営主体

社会福祉事業とは、高齢者、子ども、障害者、生活困窮者など、何らかの支援を必要とする人に対して、医療、教育、文化、労働などさまざまな社会福祉サービスを提供する事業をいいます。

国や地方公共団体、社会福祉法人、会社、NPO法人、医療法人などが行っています。


社会福祉施設は全国に約77,000あり、そのうちの約56,000施設は公立以外で経営されています。

そして、社会福祉法人による経営は約25,000施設、営利法人(会社等)によるものは約20,000施設となっています(平成30年社会福祉施設等調査より)。

規制緩和により会社やNPO法人等による社会福祉施設が増えましたが、国や地方公共団体または社会福祉法人でなければ経営してはいけない事業もあります。

社会福祉事業は、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業に分類されていて、経営主体に制限があるものがあります。

第一種社会福祉事業

児童養護施設、老人ホーム、障害者支援施設の経営など、主として入所による施設サービスをおこなう事業は、第一種社会福祉事業に分類されています。

利用者への影響が大きいため、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業です。

第一種社会福祉事業の経営主体は、原則として、国、地方公共団体または社会福祉法人で、その他の団体(会社やNPO法人等)は、都道府県知事等の許可が必要になります。

保護施設・養護老人ホーム・特別養護老人ホームの経営は、国、地方公共団体または社会福祉法人に限定されています。

第二種社会福祉事業

保育所の経営、ホームヘルプ、デイサービス、相談事業など、主として在宅サービスを行う事業は、第二種社会福祉事業に分類されています。

利用者への影響が比較的小さいため、公的規制の必要性が低い事業です。

第二種社会福祉事業の経営主体に制限はなく届出により事業経営が可能となります。


国や地方公共団体を除いては社会福祉法人でなければ行えない事業の場合は、会社やNPO法人ではなく、社会福祉法人を設立しなければなりません。

第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の内訳は、平成30年度厚生労働白書 資料8.社会福祉・援護 p.192をご覧ください。

それでは、社会福祉法人とはどのような団体で、どのように設立するのでしょうか。

社会福祉法人とは

社会福祉法人とはなんでしょうか

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的とした、社会福祉法にもとづいて設立される、非営利法人です。

事業で得た利益は、団体の事業目的を達成するために使います。


第一種社会福祉事業または第二種社会福祉事業を行います。

社会福祉事業のほかには、社会福祉事業に支障がない範囲で、公益事業、収益事業を行うことができます。

公益事業には、有料老人ホームの経営、子育て支援事業、人材育成事業などがあります。

収益事業には、ビルの貸与や駐車場の経営などがあり、得た収益は、社会福祉事業や公益事業にあてなければいけません。

都道府県知事や市長、特別区長といった管轄する行政庁に、設立申請をして認可をうけます。

社会福祉法人の設立の要件

主な設立要件を以下に記します。


役員等の設置

理事6名以上、評議員7名以上、監事2名以上、(一定の規模以上の場合は)会計監査人1名以上


資産

・社会福祉施設を経営する法人
 社会福祉事業を行うために直接必要なすべての物件について所有権を有していること、又は国若しくは地方公共団体から貸与、若しくは使用許可を受けていること(貸与の場合は1000万円以上の資産必要)。

・社会福祉施設を経営しない法人
 原則として1億円以上の資産を基本財産とすること。

社会福祉法人の設立の流れ

社会福祉法人の設立の流れについて、東京都「社会福祉法人事務手続」を参考、一例として、ご紹介します。
(実際の手続きの際は、管轄する行政庁の手引書等をご確認ください。)

(1)設立準備委員会の設置(必須ではない)

(2)管轄する行政庁への事前相談
 ・事業の定員や職員配置、予算、設立に必要な不動産や運転資金などの設立要件を確認
 ・建物の新築、改築等を行う場合は、施設整備計画や補助金申請の協議を行う。
 ・施設整備費に関する補助金を活用する場合は、補助金申請の協議を行う。
 ・設立時の役員等が選任要件を満たしているかを確認。

(3)資産及び資金にかかる計画や、収支計画の確認及び収支予算書の作成

(4)職員、利用者やその家族、地域住民や自治会への説明を行い、同意を得ること

(5)設立認可申請書類の作成・提出
  設立認可申請書、定款、添付書類目録、財産目録、土地・建物関係書類、資金の贈与関係書類、事業計画書など

(6)設立認可申請書類が正式に収受されてから、概ね1か月~2か月後に設立認可

(7)設立認可の後2週間以内に、設立登記


次に、社会福祉法人を設立することのメリットやデメリットについて以下にまとめます。

社会福祉法人設立のメリット・デメリット

社会福祉法人を設立することのメリット、デメリット

社会福祉法人のメリット

・助成金や補助金の種類や額が大きい
 施設整備に対して一定額の補助を受けることもできます。
 運営費等の3/4以上を国や地方自治体が負担する形態の施設もあります。 

・税制面での優遇措置
 (収益事業以外の)法人税、(社会福祉事業用の)固定資産税、不動産取得税は、原則非課税です。

・社会の信頼度が高い
 地域の理解を得られやすく、事業の目的を果たしやすいといえます。

社会福祉法人のデメリット

・役員や資産の要件など、設立要件が厳しい

・設立のための準備や手続きが多く、設立までに1年以上かかるといわれている

・管轄する行政庁等の厳しい監督下に置かれ、提出する報告書が沢山あり、毎年の監査がある

・解散した場合の残余財産は家族などの私人には渡らず、国庫又は他の社会福祉法人等に引き継がれる

まとめ

今回は、社会福祉法人のことを中心に、社会福祉事業をおこす際に設立する法人について説明しました。

ポイントです。

・国や地方自治体を除いては社会福祉法人でなければ行えない社会福祉事業があるため、設立する法人の形態を決める際に注意する。

・社会福祉法人は設立要件が厳しいため、設立準備の際は管轄する行政庁との事前相談が重要。

・会社やNPO法人でも行える社会福祉事業であれば、社会福祉法人設立のメリット・デメリットを考慮して、どのような形態の法人を設立するか決めること。(会社やNPO法人の設立についてはこちらを参照)


設立前も設立後も多くの手続きがありますが、社会的信頼度が高く、補助金が豊富な社会福祉法人。

設立すると決めたら、管轄する行政庁との念入りな相談を重ねて、必要に応じて行政書士等の専門家のサポートを受けながら、設立に向けて準備を進めましょう。