亡くなった親の遺言があるかないか分からないとき、探さなかったことで起きる相続トラブルと遺言の調べ方

親が亡くなったとき、遺言の有無を調べずに相続手続きを進めてしまうと、後から遺言が見つかった際に、遺産分割協議のやり直しや相続人間の争いに発展するおそれがあります。

遺言の調査は、遺品を探す以外に、公証役場の遺言検索システムを利用したり、法務局の自筆証書遺言保管状況を確認したりすることができます。

本コラムでは、遺言の調べ方と、調べなかった場合のリスクについて、専門家の視点から解説します。

遺言の有無を調べることが相続の第一歩

遺言があれば遺産分割はしやすい

亡くなられた方の遺産を引き継ぐことを相続といいます。

親が亡くなり相続手続きが始まると、遺産の内容を確認し、どう分けるかを決めていきます。

遺言がある場合は、遺産の分け方を相続人全員で話し合って遺産分割協議書にまとめなくても、遺言書を提出して名義変更などの手続きを進めることができます。

遺言の有無は、相続手続き全体の進め方を大きく左右します。

遺言の保管場所

遺言には公正証書遺言と自筆証書遺言があり、それぞれ保管場所が異なります。

公正証書遺言は公証役場に原本が保管されます。

自筆証書遺言は法務局に預けている人もいると思いますが、自宅の金庫や仏壇などに保管している人もいるでしょう。

「うちの親は遺言など書いていない」と思い込まず、しっかり探すことをおすすめします。

遺言の有無を調べる3つの方法

自宅を念入りに探す

自宅の遺品整理のときに、机の奥、金庫、仏壇の引き出しなどを丁寧に確認します。

遺言そのものでなくても、遺言書の保管場所を記したメモなどが見付かる場合もあります。

もしも自筆の遺言の原本が見付かったら、家庭裁判所での検認が必要ですので、むやみに開封しないでください。


なお、自筆証書遺言は、2020年7月から、自筆証書遺言書を法務局で保管してもらう制度が始まりました。

この制度を利用して法務局で遺言を預かってもらっている場合は、保管証があるはずです。


公正証書遺言を作成した場合は、作成した遺言の写しである正本や謄本があるはずです。

または、公証役場の利用明細や公証人とのやり取りの記録が通帳や郵便物に残っていれば、公正証書遺言の存在を推測する手がかりにもなります。

法務局の自筆証書遺言保管制度を確認する

法務局に申請をして、自筆証書遺言が保管されているかどうかを確認する方法があります。

遺言書保管事実証明書の交付の請求です。

基本的には親が亡くなった後に相続人がこの請求をすることができます。

遺言が法務局に保管されていないときは、「遺言書が保管されていないこと」が記された遺言書保管事実証明書が発行されます。


一方、遺言が法務局に保管されているときは、「遺言書が保管されていること」「保管場所」「保管番号」等が記載されています。

遺言書が保管されていることが分かったら、法務局に「遺言書情報証明書」の交付を請求し、遺言書の内容を確認します。

遺言書情報証明書には遺言書の画像情報が記載されており、相続手続において遺言書の原本に代えて使用することができます。

公証役場の遺言検索システムを利用する

公正証書遺言の有無は、公証役場の遺言検索システムを利用して調べることが可能です。

1989年(平成元年)以降に作成された公正証書遺言が対象で、全国どこの公証役場でも照会が可能です。

まずは公証役場に電話をして、必要書類の確認と面談の予約をしてください。

公証役場によって多少手続きが異なる場合があります。

遺言を確認せずに相続手続きを進めてしまったら

協議のやり直しが必要になることも

遺産分割協議が成立した後に、その内容と異なる遺言が見つかった場合、遺言の内容や協議に至った経緯によっては、すでに成立した協議の効力が争われ、やり直しが必要になることがあります。

すでに第三者に不動産を売却している場合などは、財産の返還や登記をめぐって問題が複雑になるおそれもあります。

こうした事態を避けるため、遺産分割協議を始める前に、遺言の有無と内容を確認しておくことが大切です。

一部の相続人だけが遺言を知っていた場合のリスク

一部の相続人だけが遺言の存在や内容を知りながら、他の相続人に伝えずに遺産分割協議を進めると、遺言を隠していたのではないかと疑われ、相続人間の不信につながることがあります。

遺言書の隠匿や改変、遺産分割協議の効力などをめぐって争いになれば、調停や訴訟に発展することもあります。

相続人間の認識のずれや疑念を防ぐためにも、遺言の有無を早い段階で調べ、関係者間で情報を共有することが重要です。

まとめ

今回は、遺言の調べ方と、調べなかった場合のリスクについて解説しました。

自宅以外に法務局と公証役場を必ず調べなければいけないわけではありません。

ご状況に応じて、調べるか否かの判断をしてください。

また、遺言の有無の調査の過程と結果は、相続人の全員で共有しておくことが大切です。

遺言の調査や検認、遺言の内容に基づく相続手続きには、判断に迷う場面が少なくありません。

不明な点があるときは、相続に強い行政書士などの専門家への早めの相談を検討し、円満な相続手続きにしましょう。

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行政書士、2級FP技能士
東京都行政書士会中央支部理事(終活・相続についての無料相談会実行委員)
宮城 美保

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